| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-220  (Poster presentation)

ボルネオ熱帯低地林におけるNP施肥に対する樹木細根の形態・ホスファターゼ活性の応答
Effects of nitrogen and phosphorus fertilization on the morphology and phosphatase activity of fine roots in Bornean tropical rain forests

*平野侑(東京農業大学), 北山兼弘(京都大学), 今井伸夫(東京農業大学)
*Yu HIRANO(Tokyo Univ. Agriculture), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.), Nobuo IMAI(Tokyo Univ. Agriculture)

リン(P)は、熱帯林において樹木の生理学的プロセスの制限要因になっている。樹木は不足するPを獲得するために、土壌有機態P(土壌Po)の分解酵素ホスファターゼを細根から分泌して土壌Poの分解能を高めたり、細根の形態を変化させたりして、無機態Pの吸収能を高めている。土壌Poは分解特性の異なる多様な化学形態をとり、エステル結合が1つのもの(易分解性のモノエステル態と難分解性のフィチン酸)と2つのもの(ジエステル態)に大別できる。植物はこれに対応した多様なホスファターゼ{上記3種の土壌Poに対してそれぞれホスホモノエステラーゼ(PME)、フィターゼ(PhT)、ホスホジエステラーゼ(PDE)}を細根から分泌し無機化を促進している。
しかし、先行研究の多くは複数種をまとめた林分レベルでのホスファターゼ活性、及びPME・PDEのみの評価に限られており、P欠乏に対する樹種レベルのP吸収特性は未解明である。そこで、マレーシア・サバ州の熱帯低地林の野外施肥試験地{4処理(対照・窒素(N)・P・NP)}において、遷移系列や根圏共生微生物が異なる7樹種の細根ホスファターゼ3種の活性と細根形態を、樹種ごとに測定した。

 原生林種2種の比根長(SRL)は、N施肥によって増加した。このことから、一部の原生林種は土壌N濃度に対して可塑的に細根形態を変化させている可能性が示唆された。また、P施肥により、7種すべてのPME活性及び原生林種3種のPhT活性が減少した一方、PDE活性は1種のみでしか減少しなかった。したがって、P欠乏環境の多くの樹種はP獲得源としてエステル結合が1つの土壌Po(モノエステル態、フィチン酸)に依存的であること、特に原生林種は難分解性のフィチン酸の分解能を高めていることが示唆された。これは、遷移系列や根圏共生微生物の異なる樹種間で、異なるP獲得戦略をもつことを意味する。


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