| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-222  (Poster presentation)

モウソウチク林における根滲出物放出量-斜面位置と根形態に着目して-
The root exudation flux in moso bamboo forest : focusing on slop position and root morphology

*川上えりか(九州大学), 安宅未央子(京都大学), 久米朋宣(九州大学), 下野皓平(九州大学), 片山歩美(九州大学)
*Erika KAWAKAMI(Kyushu Univ.), Mioko ATAKA(Kyoto Univ.), Tomonori KUME(Kyushu Univ.), Kohei SHIMONO(Kyushu Univ.), Ayumi KATAYAMA(Kyushu Univ.)

植物根から土壌中へ有機態炭素として放出される根滲出物は、根圏の微生物活性を高め養分循環を促進する働きがある。このため正味の滲出物放出量の測定は植物体の養分獲得プロセスの理解に重要であるが、国内では樹木を対象とした数例の研究にとどまっている。そこで本研究では、近年面積を拡大させている管理放棄モウソウチク(以下タケ)林を対象とし、細根からの滲出物放出量に斜面位置と根形態形質が与える影響を調べることで、タケ細根における炭素を利用した養分獲得プロセスを評価した。
本研究は同一斜面上に位置する管理放棄竹林で行った。斜面下部、上部の各1プロットにおいて、4地点から細根(2 mm以下)2本ずつをランダムに掘り起こし、シリンジシステムを用いて根滲出物をサンプリングした。滲出物を採取した根系について、チャンバーシステムを用いた根呼吸速度の測定および直径、比根長、組織密度など根形態の測定を行った。
各測定項目を斜面位置で比較した結果、根呼吸速度(μg C m-1 h-1)、根直径は斜面下部で有意に大きく、比根長 (m g-1) は斜面上部で大きい傾向が見られた。その他の測定項目に関しては斜面位置による有意な違いは得られなかったが、平均滲出物放出量は斜面上部(0.05 ± 0.03 mg C g-1 h-1 ; 3.6 ± 3 mg C m-1 h-1)の方が斜面下部(0.04 ± 0.05 mg C g-1 h-1 ; 2.7 ± 3 mg C m-1 h-1 )よりも高い値を示した。また、根滲出物放出量(mg C g-1 h-1)は、根呼吸速度(mg C g-1 h-1)と根組織密度(g cm-3)との間にそれぞれ有意な正の相関関係、負の相関関係を示した。これらは樹木を対象とした先行研究で示された関係性と一致しており、タケにおいても樹木と同様に生理活性が高く、物理強度が弱い細根ほど滲出物放出量が高くなることが示された。以上の結果から、斜面上部では下部と比較して養水分吸収に適した細根形質を保持していることが示唆された。今後、タケ細根における滲出物放出量の林分スケールへ拡張を試みる計画である。


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