| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-224 (Poster presentation)
生態系の炭素循環において大きな割合を占める土壌呼吸(SR)は根呼吸(RR)と従属栄養生物呼吸(HR)に分けられる。しかし、野外でSRからRRを分離して測定することは技術的に難しく、その変動要因については不明な点が多い。森林生態系でのRRの測定には根を除去した区画から得られるHRをSRから差し引くトレンチ法が広く用いられている。しかし、この手法ではRRを直接測定していないため誤差が大きい。この問題を避けるためには、RRを直接測定する手法が望ましいが、野外で採取した切断根をチャンバーに封入して測定する方法では、植物体地上部と植物根との間の連携が絶たれているという問題がある。したがって、根呼吸に対して植物体地上部が及ぼす影響についてはまだ完全に理解されているとは言えず、さらなる知見の蓄積が必要である。そこで本研究では、根呼吸の環境応答性に対して地上部の存在が及ぼす影響を明らかにすることを目的として、異なる温度・照度条件下における切断根および非切断根の呼吸を実験室内で測定した。
本研究は、温度、照度を任意に設定できる人工気象器内で、サンチュ(Lactuca sativa L.)をサンプルとして行った。切断根・非切断根を測定チャンバー内に入れ、その呼吸を通気法により測定した。1回の測定は12時間かけて行い、前半6時間を暗期、後半6時間を明期としてRRの変化を調べた。また、測定温度を20℃、25℃、30℃に変更して同様の測定を行った。
非切断根では、暗期から明期に変わる時にRRが大きく増加した。これは、植物体の上部に光が当たり光合成が行われることによってRRが上昇したためだと考えられる。切断根・非切断根の温度依存性ははっきりとしていなかった。しかし切断根のRRは一般的に温度に対して指数関数的に増加することが知られている。これは、非切断根と切断根のRRの測定において別個体を用いたことが原因として考えられ、今後の測定上の課題でもある。