| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-225 (Poster presentation)
モンゴル草原は炭素貯蓄量が多く地球の炭素バランスに貢献するが,気候変動と土地利用の影響を受けその機能が変化している.気候変動は日夜の非対称的な気温上昇や降水量変化が複合的に起こっており,そのパターンにより生態系は異なる反応を示す.また,放牧圧の増加による多様性変化は気候変動から受ける影響を増幅させる可能性がある.攪乱間の相互作用による草原生態系の炭素動態やバイオマスの変化は将来の気候変動や生産性にフィードバックするため,その把握は将来の気候変動や生産性の理解に繋がるが,十分な知見がない現状にある.
本研究では,モンゴル草原において,4パターンの気候条件(日中加温,日夜加温,日中加温+加水,対照)と放牧による植生変化を考慮した3段階の種数操作を掛け合わせた実験操作を行い,複合的な気候変動,および気候変動と多様性の相互作用がバイオマス・炭素動態に与える影響について検証した.
その結果,水分条件がバイオマスおよび土壌呼吸を介して炭素収支に影響することが示唆された.調査年間で降水量の年変動が大きく,植物の生長期間の少雨によりバイオマスが減少した.気候条件操作では,加温操作に伴う乾燥化がバイオマスを減少させる傾向にあった.CO2吸収量は少雨年で少なく,湿潤な調査区で増加する傾向にあった.一方,土壌と植物の呼吸に伴うCO2放出量は年変動が小さく,土壌呼吸の影響が大きい可能性があった.日夜の加温操作に対して炭素収支は差異的な反応を示し,CO2放出量の温度変化への感受性は日中より夜間で高かった.
多様性と気候変動の相互作用は検出されず,気候条件の影響が大きいことが示された.しかし実験操作による温度変化で操作以上の種数および種組成変化が認められ,主に一年生広葉草本の優占度が高くなった.これらの種のバイオマスは炭素収支に相関があったことより,気候の年変動,年内変動が種組成を介して炭素収支に影響したと考えられた.