| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-231 (Poster presentation)
落葉分解菌とは、落葉を食物かつ住み場所として利用する菌類群である。落葉分解菌の中でもリグニン分解活性を有する菌類はリグニン分解菌と区分され、リグニンが落葉の重量の大部分を占めていることから落葉の分解においてリグニン分解菌が中心的な役割を担っている。リグニン分解菌の分解機能は分類群ごとで異なり、分類群ごとで栄養を獲得する資源が異なる可能性が考えられる。本研究ではリグニン分解菌のリグニン以外の基質利用性に着目した。
本研究のサンプルとして、本州の8箇所のスダジイ落葉の漂白部から分離された52菌株を用いた。52菌株はDNAバーコーディングによって分類群が同定されており、担子菌類、クロサイワイタケ科の子嚢菌類に分類された。本研究は、担子菌類とクロサイワイタケ科の子嚢菌類の基質利用性を測定し、分類群ごとで基質利用性が異なるのかを評価することを目的とした。基質利用性を評価するために、31種類の炭素基質が充填されているECOプレートを用いた。このプレートにはリグニンをモデルとする化合物は含まれていない。菌株は1%麦芽エキス液体培地で前培養し、撹拌し希釈後プレートの各ウェルに接種後、2週間培養した時点での595 nmにおける吸光度を測定した。基質利用性の評価にAverage well color development(AWCD)、Shannon diversity index (H’)を用いた。AWCDは菌類の炭素基質下での代謝速度を反映した指標で、H’は菌類によって代謝された基質の豊富さと代謝量の均等さを反映した指標である。
Nodulisporium属のAWCDの平均値は、担子菌類、Nemaina属、Xylaria属のクロサイワイタケ科の子嚢菌類よりも高くなったが、担子菌類、クロサイワイタケ科の子嚢菌類の間でH’の平均値に有意な差はなかった。Nodulisporium属と他の分類群で、炭素基質下での代謝速度は異なるが、利用できる基質の種類数は変わらないことが示された。リグニン分解菌の中でも分類群ごとで異なる資源を利用していることが示唆された。