| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-238 (Poster presentation)
自然界において被食者となる生物は様々な防御機構を発達させて捕食者から身を守っており、ヒキガエル類はbufadienolides (BD)をはじめとする有毒物質を分泌して身を守っている。その一方で、哺乳類・爬虫類・両生類などの一部ではBD耐性を持つ種が確認されている。ヘビ類における網羅的な解析では、ヒキガエルを摂食しない種を含めて広範な系統でBD耐性が確認されたため、これまで考えられてきたよりも多くの動物種がBD耐性を保持している可能性が浮上している。前述の通り、哺乳類などではBD耐性の解析が行われているものの、鳥類を対象としたBD耐性の分子的な解析例は乏しく、その詳細は明らかとなっていない。
本発表では、鳥類におけるBD耐性種の系統的な関係および耐性獲得の時期について明らかにするとともに、BD耐性獲得の進化的な背景について考察する。分子的な解析の結果、鳥類の分類上の大きなグループであるPalaeognathae, GalloanseresおよびNeoavesの各系統でそれぞれBD耐性種を確認した。これらの系統はヒキガエル類の誕生時期(78–99 Ma)以前に分岐したと考えられることから、鳥類がヒキガエル類誕生後にBD耐性を獲得したとすると、複数回独立して耐性獲得が生じたと考えられる。また、鳥類の一部は少なくとも始新世初期にはBD耐性を獲得しており、さらにその起源は白亜紀後期にまで遡る可能性があることも分かった。これらの結果は、ヒキガエル類の毒による防御と脊椎動物における耐性獲得という進化現象の理解を深める上で重要な知見となることが期待される。