| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-239  (Poster presentation)

異所的な非生態的種分化から始まる適応放散はどのようにして起こるのか?
How does adaptive radiation begin with allopatric non-ecological speciation?

*松浦崇裕, 瀧本岳(東大・院・農)
*Takahiro MATSUURA, Gaku TAKIMOTO(Tokyou Univ.)

適応放散とは単一の祖先種から生態的多様化を伴いながら多くの種が急速に生じる現象である。従来、適応放散は生態的種分化によって駆動されると考えられることが多かった。しかし近年、異所的な非生態的種分化と、その後の二次的接触による生態的形質の分岐によって、適応放散と類似したパターンが生じうることが指摘されている。この非生態的種分化型適応放散は、生息地が分断・再結合することで姉妹個体群が分離・融合する状況で起きやすいと考えられる。また、低緯度の山岳地域に分布する種を中心に多くの分類群で、生息地の分断と再結合による種の多様化が報告されている。そこで本研究では、個体ベースモデルを用いて、生息地の分断・再結合に伴う非生態的種分化と二次的接触が適応放散を引き起こす理論メカニズムを調べた。特に、性的対立と繁殖干渉に注目したメカニズムを新規に創案し、検討した。性的対立と繁殖干渉は多くの分類群で実証され、種分化や形質分岐、種間共存の重要メカニズムであることが理論的に予測されている。性的対立と繁殖干渉はオスとの交尾時に被るメスのコストとしてモデルに組み込み、コストの大きさによって繁殖干渉と性的対立の強さを変化させた。モデル解析から、非生態的種分化型適応放散が起きるのは性的対立が存在し繁殖干渉の強さが中程度の時であることが分かった。本研究の結果は、生息地の分断・再結合が性的対立と繁殖干渉を通じて適応放散を起こす理論メカニズムの一つを与え、生態的種分化主導ではない非生態的種分化型適応放散の重要性を示唆するものである。


日本生態学会