| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-247  (Poster presentation)

ゲンゴロウ科の流水・止水性種における遊泳に関わる形態の進化
Evolution of swimming-related characters in lotic and lentic diving beetles

*中野恵輔, 池田紘士(弘前大学)
*Keisuke NAKANO, Hiroshi IKEDA(Hirosaki Univ.)

 かつて海の中に生息していた生物から陸上生活を行う生物が出現した。しかし、その中から再び水中生活を行うように進化した分類群も存在し、昆虫ではカゲロウ目、トンボ目、カワゲラ目、甲虫目などがあげられ、このような水生昆虫は昆虫全種の3%を占める。甲虫目の水生昆虫であるゲンゴロウ科においては後脚が長く発達して顕著な遊泳毛が生えており、陸生甲虫と比較して水中での生活に特化した形態に進化している。このため、水生昆虫の中でも特に頻繁に遊泳する姿がみられる。ゲンゴロウ科には止水域に生息する種と流水域に生息する種がおり、止水域に生息していた祖先種から流水性種が進化したことが明らかにされている。止水性種はよく泳ぎまわり、流水性種は普段は水流を避けるために河岸のよどみや礫の間に隠れていることが多い。このようなことから流水性種は水流のより少ない岩陰に隠れることができるように体型がより薄くなっており、止水性種は活発に泳ぐことができるように長い後脚と遊泳毛を持つという仮説を立て、この仮説の検証を行った。
 本研究では止水性種と流水性種で形態の違いがみられるかを明らかにするため、ゲンゴロウ科に属する5亜科25種を対象にした。幾何学的形態測定法と主成分分析の2つの方法を用いて前者の方法で横から見たときの背側と腹側の形状と厚さ、後者の方法で後脚と遊泳毛の長さに違いがあるかを調べた。
 幾何学的形態測定法において、流水性種は止水性種と比較して胸部腹側が平らになっており、体型が薄いことが分かった。主成分分析では、後脚と遊泳毛の長さに止水・流水性種間で違いがみられなかった。これらのことから止水性から流水性への進化において、胸部腹側が平らになり体型が薄くなるような形態へと進化したと考えられる。


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