| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-249  (Poster presentation)

3次元幾何学的形態測定法を用いた琵琶湖産魚類の形態適応に関する研究
Morphological study on the adaptation of fishes in Lake Biwa using three dimensional geometric morphometrics

*田中翔大(京大院・理), 田畑諒一(滋賀県立琵琶湖博物館), 森本直記(京大院・理), 渡辺勝敏(京大院・理)
*Shodai TANAKA(Kyoto University), Ryoichi TABATA(Lake Biwa Museum), Naoki MORIMOTO(Kyoto University), Katsutoshi WATANABE(Kyoto University)

生態機能と関連した形態特性の研究は、生物の適応や多様化のパターン、プロセスの理解に重要な役割をもつ。比較形態研究において、従来、平面投射画像に基づく2次元幾何学的形態測定法(2DGM)が広く用いられてきたが、3D・CTスキャニング技術の一般化に伴い、立体的な構造の情報も取り込んだ3次元幾何学的形態測定法(3DGM)の活用も広がりつつある。本研究は、琵琶湖の独特な環境に適応した複数の固有魚種(3属)を対象に、3DGMを用いて近縁種からの形態分化パターンを明らかにするとともに、2DGMとの比較も行いながら、3DGMの有用性について検討した。琵琶湖の沖合域に適応した固有種ホンモロコ(タモロコ属)とスゴモロコ(スゴモロコ属)では、全身(細く伸びた体型)と頭部(前・上向きの口)に関して近縁種からの形態分化に共通性が見られた。この結果は、沖合域という広大で開けた環境において、異なる種群に対して類似した選択圧が働いた可能性を示唆する。3DGMにおいて2DGMよりも対象群間の形態の差異が明確に検出された場合もあり、少なくとも部分的な3DGMの優位性が確認された。一方、3DGMでは標本固定等に由来する全身の湾曲も抽出されやすいため、注意深い検討が必要である。スゴモロコと近縁亜種コウライモロコの3Dモデルを用いた数値流体力学的シミュレーションの結果、前者で水から受ける抵抗が小さく、生息環境と整合的であった。本研究の結果は、3DGMが環境適応の研究において有効であり、複数種群間における形態の多様化パターンの比較にも適した方法であることを示す。


日本生態学会