| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-255  (Poster presentation)

オウトウショウジョウバエにおける都市化に対する温度耐性や形態の急速な適応
Rapid adaptation to urbanization mediated by thermal tolerance and morphology in Drosophila suzukii

*佐藤あやめ, 高橋佑磨(千葉大・理)
*Ayame SATO, Yuma TAKAHASHI(Fac. Sci., Chiba Univ.)

現在、地球規模で起こっている都市化は温度の上昇や日長の乱れ、生息地の分断などを通じて生物の生息環境に急激な変化をもたらしている。これらの変化は、生息適地を縮小させることで個体数や種数などの生態的動態に影響することが知られている。一方で、都市化による生息環境の変化は、数十年から数百年という比較的短い時間で生物の形質にも急速な変化をもたらしていることが指摘されている。実際、多くの種において都市部の個体と郊外の個体とで、温度耐性や分散能力といった形質の差が明らかになってきた。しかし、そのような形質の差が進化的に決定されているのか、単に表現型可塑性によってエピジェネティックに決定されているのかを区別した研究は多くない。本研究では、郊外から都市部まで幅広い環境に生息する果樹害虫のオウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)を用いて、都市化に伴った形質の遺伝的変化を検証することを目的とした。千葉県と東京都の12地点について、衛星画像を用いて各地点5㎞圏内の都市化指数を求めた。各地点で本種の雌個体を捕獲し、地点ごとに複数の単雌系統を確立した。形質の測定に先立ち、すべての単雌系統を実験室内の一定環境(25℃)で数世代飼育した後、各地点3つ程度の系統を用いて温度耐性と胸幅、翅長の測定を行なった。高温耐性については都市の個体と郊外の個体とで差がみられなかったが、都市の個体は郊外の個体より低温耐性が有意に低かった。また、胸幅と翅長には都市と郊外の個体間で差は検出されなかったが、胸幅に対する相対翅長に対しては測定時期の有意な交互作用が検出され、都市と郊外の個体の大小関係は季節により逆転した。これらの結果は、都市化に伴って本種の形態や温度耐性に急速な適応が起きていることを示すとともに、実験室内で季節間での未知の環境変化があることを示唆している。


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