| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-262  (Poster presentation)

生物が生息地改変する場合の群集形成のモデル
A model of community formation when organisms change habitat

*岩下源, 近藤倫生(東北大学)
*Gen IWASHITA, Michio KONDO(Tohoku Univ)

生物が環境の改変を通じて自身の適応度を変化させる現象は、ニッチ構築と呼ばれている。ニッチ構築は種間相互作用の原因となりうる。例えば、ビーバーは川の水を堰き止めてダムを作るが、その結果、それまでにはなかった水草が生えたり水鳥が訪れるようになったりするかもしれない。ニッチ構築は生物において一般的な現象であることから、ニッチ構築が介在する種間相互作用は、生物群集の形成においてしばしば起こっていると考えられる。しかし、この現象を適切に記述した数理モデルは多くなく、ニッチ構築の群集動態における役割は十分に理解されているとは言えない。
本研究では、ニッチ構築によって生じる種間相互作用を記述した生物群集動態の数理モデルを提案し、この相互作用が群集の形成プロセスにどのような役割を果たしうるかを理論的に理解することを目的とした。ここで提案する数理モデルでは、生物群集とニッチの状態、両者の間の相互作用を明示的に表現することで、生物のニッチ構築が群集動態に及ぼす影響を扱うことを目指した。そのために以下が仮定されている:(1)ニッチは一次元上に連続的に存在し、個々の生物種は特有のニッチを利用する;(2)生物は自身が利用するニッチの量にしたがって増殖する;(3)ニッチはそれ自身の自律的変化と生物によるニッチ構築の両方の影響を受けて変化する。数理モデルの解析の結果、ニッチ構築は多様な種間相互作用を生み出しうることがわかった。すなわち、ある生物のニッチが別の生物のニッチ構築により、正の影響または負の影響を受けるかは、両者のニッチ間の関係やニッチ構築の効果、ニッチの自律的変動等のいくつかの条件の組み合わせによって変化する。本発表では、ニッチ構築が群集の形成において果たす役割について、この数理モデルから得られた知見を紹介する。


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