| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-266  (Poster presentation)

三瓶山麓における絶滅危惧種オキナグサの個体分布および開花特性
Flowering habit and distribution of endangered Pulsatilla cernua at Mt.Sambe, Shimane

*針本翔太(島根大学), 久保満佐子(島根大学), 井上雅仁(三瓶自然館サヒメル)
*Shota HARIMOTO(Shimane Univ.), Masako KUBO(Shimane Univ.), Masahito INOUE(Sanbe Shizenkan Nature Museum)

 島根県大田市の三瓶山麓にある西の原と北の原は古くから火入れや草刈り,放牧が行われてきた半自然草原である。全国的に半自然草原の面積は年々減少し,それに伴い欠落する種には絶滅危惧種が多く,本草原に生育するオキナグサ(Pulsatilla cernua)は国および島根県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。そこで本研究では,三瓶山麓におけるオキナグサ個体数の減少要因の解明と個体群の保全のため,本種の生育環境および開花特性について調査を行った。
 三瓶山麓におけるオキナグサの個体分布を調べるために,西の原およびに北の原にそれぞれ750 m2の調査区を設置し,個体の分布と各個体の開花と結実の有無を調査した。さらに本種の生育環境を調べるために,西の原と北の原で植生調査(調査枠1×1 m)を行った。北の原ではオキナグサの開花特性を把握するため3月下旬から5月中旬にかけておよそ1週間間隔で各花冠の開花状況を13段階に分けて調査した。
 西の原のオキナグサの開花個体数は5個体,未開花個体数は20個体,北の原の開花個体数は38個体,未開花個体数は19個体であった。開花個体あたりの平均花冠数は西の原で1.4個,北の原で2.6個であった。西の原と北の原における植生調査データを二元指標種分析によって群落を分割した結果,指標種を基準に西の原はヤマナラシ・トダシバ群落,オトギリソウ群落,ススキ群落,ツクシハギ群落,北の原はアリノトウグサ群落,オキナグサ群落,ワラビ・コマツナギ群落,ネザサ・ヨモギ群落のそれぞれ4グループに分割された。オキナグサが最も多く出現した群落は,西の原はオトギリソウ群落,北の原はオキナグサ群落であり,どちらの群落も他の群落より群落高が低かった。また,本種の4月中に開花した花冠の結実率は72.2~74.2 %であったが,5月中に開花した花冠の結実率は25.0 %と低く,開花時期が結実に影響を及ぼすことが示唆された。


日本生態学会