| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-268  (Poster presentation)

八重山諸島に生育するガジュマルの葉形態と種子発芽
Leaf shapes and seed germination of Ficus microcarpa growing on Yaeyama Islands

*元吉玲那, 藤吉正明, 水谷晃, 河野裕美(東海大学)
*Rena MOTOYOSHI, Masaaki FUJIYOSHI, Akira MIZUTANI, Hiroyoshi KOHNO(Tokai University)

八重山諸島周辺には葉形態の異なるガジュマルが自生していることが知られている。それらの詳細な分布を明らかにするため、ガジュマルの葉形態と種子発芽能力を調査した。調査地は石垣島・西表島・仲ノ神島・竹富島・黒島・鳩間島・波照間島の6島とし、海岸に生育する野生個体(仲ノ神島では稜線沿いの個体)から20~30枚の葉を採取した。葉身の縦幅および横幅を計測し比率を算出した。また葉の先端の特徴から突頭、鈍頭及び円頭に区分し、個体あたりの割合を比較した。さらに成熟した果実がみられた場合、1個体につき最大8個を採取して、25℃の人工気象器内で加温し、発芽能力の有無を確認した。
ガジュマルは石垣島で24個体、西表島で44個体、仲ノ神島で32個体、黒島で4個体採取され、それ以外の島では見られなかった。石垣島の個体は、葉身の比率が1.5~2.3であり、83%の個体(20個体)は葉身先端の形態が全て突頭であった。次に西表島の個体は、石垣島同様に比率が1.5~2.3であったが、全て葉身の先端が突頭となる個体(23個体)の割合は石垣島よりも低く52%であり、突頭の他に鈍頭を持つ個体が確認された。仲ノ神島の個体では、比率が1.4~2.2であり、全て葉身の先端が突頭になる個体の割合はわずか6%(2個体)で、鈍頭と円頭の葉身を持つ個体が多く確認された。黒島の個体は、比率が2.0~2.2であり、ほとんどの葉身先端は突頭であった。鈍頭や円頭の割合の高い個体は、仲ノ神島に多く、次いで西表島にも存在することが明らかになった。
成熟果実は、石垣島(9個)・西表島(28個)・仲ノ神島(25個)の3島から採取できた。発芽個体数の平均値は、0.3~63個体であり、特異的な葉を持つ個体でも受粉や結実が可能であることが分かった。本種の種子は果実食の鳥類によって散布される例が知られているため、特異的な形態を持つ個体が、今後仲ノ神島や西表島からその他の島へ分散する可能性が示唆される。


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