| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-269 (Poster presentation)
日本の照葉樹林の全維管束植物の約9%を占める着生植物について、分布とその生育環境を明らかにすることは、照葉樹林の種多様性を保全するために重要である。着生植物の分布には湿度や降水量が影響すること、ホスト樹木内における着生高は光・水分要求性、乾燥耐性などの種特性の違いによって種ごとに異なることが知られている。また、ホスト樹木内の根元から樹冠にかけての環境勾配と着生植物の葉形質とには関係があることが報告されている。森林内においても尾根―谷傾度において空間的な環境勾配が生じており、着生植物の分布が種によって異なる可能性がある。本研究の目的は、尾根―谷傾度において生じる空間的な環境勾配と植物の分布パターンの種間差との関係及びその分布と葉形質との関係を明らかにすることである。調査の結果、イワヤナギシタとオサランは、開空度が高く湿度が低いと考えられる場所には分布していなかった。イワヤナギシダは葉乾物率が高く、オサランは葉重量面積比が高かったことから、これら2種は乾燥耐性が低いと考えられる。一方でマメヅタ、マメヅタラン、ムギラン、シノブ、セッコク、ヒメノキシノブは、開空度が高く乾燥していると考えられる場所にも分布していた。マメヅタ、マメヅタラン、ムギランは含水量が高かったことから、多くの水分を個体内に貯水することができるこれらの種は、強光や乾燥に対する耐性が高いと考えられる。セッコクは葉重量面積比が高く、シノブは葉乾物率が高かった。これらの葉は乾燥耐性が低いと考えられるものの、これらの種はバブルや根茎を有することから、乾燥した場所にも分布することができると推測される。以上のことから、着生植物は森林内の環境勾配に対応して種分布が異なっている可能性が示唆された。