| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-275  (Poster presentation)

西丹沢主要8種における、成長・繁殖に伴う地形的ニッチの変化
Ontogenetic topographic niche shifts in major tree species on Mt Tanzawa

*遠藤慧, 酒井暁子(横浜国大・環境情報)
*Kei ENDO, Akiko SAKAI(Yokohama Nat. Univ.)

地形の複雑さは多様な地形的ニッチを生み出し、森林群集の種多様性や個体群分布を規定する重要な要素である。また、樹木は生活史段階において、依存する環境を変化させているとされる。しかし、樹木の生活史段階の変化に伴う地形的ニッチの変化について研究された例は少ない。本研究では、起伏に富む山地冷温帯落葉樹林において、優占樹種の分布パターンに地形が及ぼす影響、および樹種ごとに生活史段階の違いによる地形的ニッチの変化を明らかにした。

調査は神奈川県丹沢山地西部の西沢集水域(306ha)で行った。集水域内全域において、2m×2mの調査区を100m間隔で格子状に139ヵ所設置し、主要8樹種(ブナ、イヌブナ、ミズナラ、アカシデ、イヌシデ、クマシデ、サワシバ、モミ)についてDBHの計測、繁殖の有無を記録した。また、各調査地点において岩石被覆率と土壌深を計測した。生活史段階の分類を行うために、樹種ごとに繁殖開始サイズの推定を行い、繁殖サイズ未満の個体を幼木、それ以上の個体を成木とした。分布に影響を及ぼす地形変数には、GISを用いて5mDEMから、標高、傾斜、複数のスケールで評価した地表凹凸度、斜面方位を算出した。

調査区全体の地形変数に対する各樹種個体群の分布は、標高・傾斜・凹凸度・土壌深・岩石被度・斜面方位の何れかに影響して有意に異なっていた。生活史段階における地形的ニッチの変化は、6樹種で確認され、そのパターンは地形的ニッチの範囲変化(ブナとイヌブナ:幼木>成木、クマシデ:幼木<成木)、地形的ニッチの転換(アカシデ、イヌシデ、モミ)に分けられた。これらニッチの変化が起こる理由としては、それぞれの樹種の種子散布による分散能力の範囲、過去の攪乱跡地に依存した一斉更新とその遷移段階などが考えられた。


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