| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-276  (Poster presentation)

ベトナム南部の熱帯山地林における樹木の展葉・開花・結実フェノロジー
Leafing, flowering, and fruiting phenology of tropical montane forest trees  in the southern highland of Vietnam

*永濱藍(九州大学), 田金秀一郎(鹿大総合研究博物館), Nguyen Van NGOC(Dalat University), Hoang Thi BINH(Dalat University), Truong Quang CUONG(Bidoup-Nui Ba National Park), Nguyen Thi Anh THU(Dalat University), 土屋考人(東京大学), Meng ZHANG(Kyushu University), Hoang Viet THANH(Dalat University), Nguyen Cuong THINH(Dalat University), 陶山佳久(東北大学), 松尾歩(東北大学), 廣田峻(東北大学), 森塚絵津子(九州大学), 遠山弘法(国立環境研究所), 永益英敏(京都大学総合博物館), 内貴章世(琉球大学), 矢原徹一(九州大学)
*Ai NAGAHAMA(Kyushu University), Shuichiro TAGANE(The Kagoshima Univ. Museum), Nguyen Van NGOC(Dalat University), Hoang Thi BINH(Dalat University), Truong Quang CUONG(Bidoup-Nui Ba National Park), Nguyen Thi Anh THU(Dalat University), Kojin TSUCHIYA(The University of Tokyo), Meng ZHANG(Kyushu University), Hoang Viet THANH(Dalat University), Nguyen Cuong THINH(Dalat University), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku University), Ayumi MATSUO(Tohoku University), HIROTA K. SHUN(Tohoku University), MORITSUKA ETSUKO(Kyushu University), Hironori TOYAMA(NIES), Hidetoshi NAGAMASU(The Kyoto University Museum), Akiyo NAIKI(University of the Ryukyus), TETSUKAzu YAHARA(Kyushu University)

アジアでは、暖温帯の照葉樹林における季節変化に応答した展葉・開花・結実フェノロジーと、熱帯多雨林における例外的な気象変化に応答した開花フェノロジーがよく研究されている。しかし、暖温帯の照葉樹林と分類群組成が似ている熱帯山地林のフェノロジー研究は遅れている。本研究では、この空白を埋め、熱帯山地林における展葉・開花・結実フェノロジーを明らかにするため、ベトナム南部の山地林5地点(標高1660–1920 m)に、1000–2500 m2の調査区を設置し、高さ4 m以上の全樹木をタグで標識した。その後、各プロットの分類群組成を調べ、個体数上位20種について、2018年6月から3ヶ月ごとの展葉・開花・結実フェノロジーを調べた。また、調査区内の全種を対象にMIG-seq法による系統解析を行い、タイプ標本と比較して種を同定した。その結果、5つの調査区全体で個体数が多かった科の優占度は、ブナ科が10.5%、クスノキ科が10.0%、アカネ科が9.5%であった。照葉樹林にも多く分布するブナ科とクスノキ科は、調査区全体でそれぞれ42種、60種が確認され、日本のブナ科とクスノキ科の総種数22種と31種を上回った。展葉は2科とも多くの種が雨季の始まりである4月頃に見られた。開花はクスノキ科が12月から7月(乾季始めから雨季前半)にかけて多く、ブナ科は開花種数が特に多い時期が見られず、雨季にも乾季にも咲いていた。これらの結果から、暖温帯の照葉樹林とベトナムの熱帯山地林の類似点として、科の組成と4月の展葉、相違点として熱帯山地林では毎年開花していない種が多いことが明らかになった。熱帯山地林の調査区では気温の年変化が3.3度(平均気温15.9度)なので、4月の展葉は、気温ではなく降水量と日長をシグナルとして開始されている可能性がある。


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