| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-279  (Poster presentation)

土壌表面の礫層が土壌水分量と植物の成長に与える影響 【B】
Effects of gravel mulching on soil water content and plant growth 【B】

*田中葉月, 立木佑弥, 鈴木準一郎(首都大学東京)
*Hazuki TANAKA, Yuuya TACHIKI, Jun-Ichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan Univ.)

土壌表面に礫層があると、その下の土壌は湿っていることが多い。そのため礫は、植物の水獲得に有利に作用し、植物の成⻑を促進する可能性がある。一方で、礫が有ると種子の侵入は起こりにくく、礫は植物の定着を阻害しうる。また、礫による成長の促進と定着の阻害を定量化した研究は極めて少ない。そこで、礫層の有無と給水の量と頻度が植物の重量や定着に及ぼす影響を評価する栽培実験を行った。実験は2019年6, 7月に44日間行った。礫層の有無および給水量・給水頻度を条件に、10反復を設けた。鉢にはあらかじめ1個体のホソムギ(Lolium perenne)を植えた。実験中は4日毎に各鉢を秤量し、土壌水分量の変化を推定した。実験終了後ホソムギと、期間中に鉢に侵入・定着した植物を刈り取り、それぞれの乾燥重量を計測した。処理間の比較のために順位和検定を行った。土壌水分量は礫が有ると有意に多かった。土壌水分量の礫の有無での差は給水量が少ないほど大きく、給水頻度にはよらなかった。ホソムギと侵入植物の重量の和も、礫が有ると有意に大きかった。さらに、礫が有る鉢では無い鉢に比べて、侵入があるとホソムギの重量は有意に大きく、侵入植物の重量は小さい傾向だった。また侵入植物の重量は、給水量が多いと、礫が無い鉢より有る鉢で小さい傾向だったが、給水量が最小だと大きかった。しかし、礫の有無で侵入頻度の差は見られなかった。また給水頻度の違いによりホソムギおよび侵入植物重量の礫の有無での差はなかった。今回の実験では、礫は土壌水分量を多く保ち定着していたホソムギの生物量を増加させた。一方、侵入の頻度には影響を及ぼさず、侵入植物の成⻑を抑制した。確率的な植物の侵入に礫は影響しなかったが、定着は阻害したことが示唆された。ただし給水が特に少ないと、侵入植物も礫による土壌水分の増加により成長しやすかった可能性がある。


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