| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-281  (Poster presentation)

ハクサンハタザオの標高適応解析-機能遺伝子の観点から
Altitudinal Adaptation of Arabidopsis halleri : focusing on functional genes

*吉田直史(東北大学), 若宮健(東北大学), 鳥居怜平(九州工業大学), 小口理一(東北大学), 石井悠(東北大学), 久保田渉誠(東京大学), 森長真一(日本大学), 花田耕介(九州工業大学), 彦坂幸毅(東北大学)
*Naofumi YOSHIDA(Tohoku Univ.), Takeshi WAKAMIYA(Tohoku Univ.), Ryouhei TORII(Kyutech), Riichi OGUCHI(Tohoku Univ.), Yuu ISHII(Tohoku Univ.), Shousei KUBOTA(Tokyo Univ.), Shin-ichi MORINAGA(Nihon Univ.), Kousuke HANADA(Kyutech), Kouki HIKOSAKA(Tohoku Univ.)

 幅広い環境に生息する種では、異なる環境で異なる形質・遺伝子に選択がはたらいた結果、様々な形質・遺伝子に種内変異が見られる場合がある。一方で、異なる環境へそれぞれ適応分化した集団間に遺伝的交流がある場合、その中間に位置する集団では、変異は中間的になる場合がある。このとき、中間領域の集団ではどのような形質・遺伝子に選択がはたらいているだろうか。
 分化した二集団由来の変異が混在していると期待される中間領域の集団においてはたらく選択には二つのシナリオが予想される。第一に、中間的な形質・遺伝子を持つ個体が中間領域の環境において選択される可能性がある。この場合、二倍体生物の遺伝子多型で考えると、適応度に関わる遺伝子多型をヘテロ接合でもつ個体の頻度が中間領域で高くなると期待される。第二に、形質・ゲノム全体の傾向としては中間的であっても、適応的に重要な一部の形質・遺伝子については、一方の親集団の変異が選択される可能性がある。この場合は前者とは逆に、片方のアリルをホモ接合でもつ個体の頻度が高くなると期待される。
 本研究では、標高間で形質・遺伝子に明確な種内変異を示す伊吹山(滋賀)のハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)の標高間変異に着目し、中間標高帯の集団の遺伝子型頻度から、中間標高でどのような選択が遺伝子多型にはたらくかをゲノムワイドに調べた。集団構造解析により、中間標高の集団は低・高標高型エコタイプの中間的な遺伝的構造をもつ傾向があることが示唆された。一方で、標高依存的な遺伝子多型の一部は中間標高帯においても低・高標高型エコタイプ由来の変異がヘテロで混ざり合わずに、ホモ接合で維持されていることが示唆された。これらの遺伝的変異は、中間標高でホモ接合の個体が選択されている可能性が考えられた。本発表では、どのような機能への関連が示唆される遺伝子で、中間標高における選択が示唆されたかを中心に報告する。


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