| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-283 (Poster presentation)
ゴンドワナ大陸由来のニューカレドニアは四国程度の面積にも関わらず生物相の固有性が高く、多くの分類群で適応放散が見られる。ニューカレドニアに生育するシソ科Oxera属には適応放散の結果、生活型・送粉様式・種子分散様式・生育環境が大きく異なっている約30の固有種が生じている。Oxera属における適応放散プロセスをゲノムレベルで理解するために、MinION (Oxford Nanopore Technologies) 及びHiSeq X (Illumina) を併用して新規全ゲノム解読を行なった。総塩基長453 Mb, N50 = 0.52 Mbpのリファレンスゲノムを構築し、31,105個の遺伝子モデルを予測した。
また、生態的特性の異なる10種の全ゲノム配列から、PSMC (Li et al., 2011) 法によって過去数百万年における個体群動態 (デモグラフィー) を推定した。その結果、鮮新世から前期更新世にかけて、多くの種で有効集団サイズが共通して増大していた。これは属内で種分化が開始した時期と一致しており (Barrabé et al., 2018)、新たなニッチの獲得によって種分化と並行して有効集団サイズが増大したと考えられる。生活史特性が類似した種が北半球に広範囲に分布するクルミ属では、種間でデモグラフィーが類似していた (Bai et al., 2018) ことと比較すると、狭い面積に分布するOxera属10種においてより種特異的なデモグラフィーが見出されたことは興味深い。また、10種のデモグラフィーは外部形質が同じ種や系統的に近い種は類似した動態が示さなかったが、生育環境が同じ種では一致した傾向が見られた