| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-289  (Poster presentation)

多雪山地におけるブナとミズナラの棲み分けの実態とその生成要因
Habitat segregation between Fagus crenata and Quercus crispula: factors causing thier distributions in a snowy mountain

*渡辺陽平(弘前大学), 白濱千紘(株式会社青森銀行), 石田清(弘前大学)
*Yohei WATANABE(Hirosaki Univ.), Chihiro SHIRAHAMA(The Aomori Bank, Ltd.), Kiyoshi ISHIDA(Hirosaki Univ.)

ブナ Fagus crenata とミズナラ Quercus crispula は冷温帯の森林における主要樹種であり、ブナは多雪地域で、ミズナラは少雪地域で優占する。一方、局所的な環境条件の変異に着目すると、積雪環境に尾根を軸にした背腹性がみられる場合があり、これは冬季季節風に対する風上斜面、風下斜面に対応していることが指摘されている。このような環境条件の背腹性が局所的な両種の棲み分けにどのような影響を及ぼすかについては解明されていない。本研究では、多雪山地における環境条件の背腹性に対応した両種の棲み分けの実態とそのメカニズムを明らかにすることを目的として調査を行った。青森県の八甲田連峰内に、尾根をまたがるように2つの林分に調査区(高木林区、低木林区)を設置して毎木調査を行い、ブナとミズナラ、他樹種について胸高断面積(BA)を算出した。また、生育環境を評価するため夏季の土壌含水率と最大積雪深、斜度を測定した。区画内における両種個体の分布を調べたところ、ブナは風上斜面の下部や尾根上、風下斜面で、ミズナラは風上斜面の上部で多く、また両種の割合には背腹性が認められた。また、どのような環境要因が両種の個体密度と相関しているかを一般化線形混合モデルを用いて解析したところ、高木林区では最大積雪深などの非生物的要因と他樹種BAなどの生物的要因の両方が両種の個体密度と相関していた。一方低木林区では非生物的要因のみが両種の個体密度と相関していた。個体密度と相関する環境要因のうち、全ての非生物的要因と一部の生物的要因に背腹性が認められた。さらに両種個体の分布パターンを解析したところ、両調査区ともに両種は区画内で排他的に分布していた。これらの結果より、多雪山地における両種の棲み分けは積雪や土壌水分などの非生物的要因の背腹性によって成立していると考えられる。高木林では生物的要因も分布に影響し、両種間の競争が棲み分けの成立に関与している可能性が示唆される。


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