| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-299  (Poster presentation)

緑藻エゾヒトエグサのオルガネラは両親から遺伝するか?
Does the biparental inheritance of organelles occur in the green alga, Monostroma angicava?

*吉田航登, 堀之内祐介, 富樫辰也(千葉大院・海洋バイオ)
*Kazuto YOSHIDA, Yusuke HORINOUCHI, Tatsuya TOGASHI(Chiba Univ.)

オルガネラの片親遺伝は、同型配偶から異型配偶への進化に関わっているかもしれない。海産緑藻は同型配偶から様々な度合いの異型配偶を行う種まで現存しているため、異型配偶の進化の研究に適した材料である。理論研究によると海産緑藻の多様な配偶様式の進化には、雄配偶子由来の資源の接合子へ貢献度が重要である。顕著な異型配偶や同型配偶を行う海産緑藻のオルガネラの遺伝様式は分かりつつあるが、わずかな異型配偶では報告がない。本研究ではわずかな異型配偶を行う海産緑藻のエゾヒトエグサに注目し、PCR-RFLP法とサンガーシーケンスにより、オルガネラDNAの遺伝様式とオルガネラDNAが消化される時期を調べた。
 オルガネラ遺伝様式を調べるために雌雄配偶体4個体をかけ合わせ16種類の接合子株とそこから発生した胞子体を得た。オルガネラDNAの消化時期を調べるために、接合子を様々な時間で固定した。雌雄配偶体(親)、接合子、胞子体、次世代の配偶体(子)でPCR-RFLPを行った。雌雄配偶体と胞子体でシーケンスを行った。
 胞子体(子)でPCR-RFLPを行った結果、両オルガネラともにバンドパターンは雌の配偶体(母)と一致した。シーケンスの結果はPCR-RFLPの結果と矛盾しなかった。接合子(子)でPCR-RFLPを行った結果、接合後2週間までの接合子のバンドは両オルガネラとも、父と母のバンドパターンを合わせたものになったが、接合後3週間では母と一致した。
 ミトコンドリアDNAも葉緑体DNAも母性遺伝していることが示唆された。この遺伝様式は、顕著な異型配偶を行う海産緑藻と一致した。父由来のオルガネラDNAは接合後2~3週間の間に消化されることが示唆された。同型配偶やわずかな異型配偶を行う海産緑藻では、接合後にオルガネラDNAが消化されるようだ。接合後に消化されるオルガネラDNAは接合子の生存率や適応度に貢献していると考えられる。雄由来の資源が接合子に貢献することは、海産緑藻の配偶様式の多様化を説明した理論と一致した。


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