| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-303  (Poster presentation)

種子サイズのばらつきとその適応的意味~コナラ・シラカシの堅果ー実生サイズより
Seed size variation and its adaptive significance - insights from acorn and seedling sizes of Quercus Serrata and Q.myrsinifolia

*小倉紗貴子, 酒井暁子(横浜国大・環境情報)
*Sakiko OGURA, Akiko SAKAI(Yokohama Nat Univ.)

一般的に、大種子ほど生存率が高いが、親木が繁殖へ投資する資源は限られているため、トレードオフの結果、一定の種子サイズに収斂する。しかし、実際には種内で様々な種子サイズが観察され、変異が大きい種と小さい種がある。この理由として、先駆的な種は撹乱後に更新し、生育地の環境が一定ではないため、様々な環境に適応するため種子サイズの変異が大きく、極相種は比較的安定した林床環境で生育するため種子サイズの変異が小さいと仮説を立てた。一方、小種子が生産される理由を、栄養条件が良好な場合には種子サイズによる競争力の違いが顕在化しないためと仮説を立てた。これらを検証するために、日本の山林に代表的なコナラ(先駆種)とシラカシ(極相種)を用いて調査・実験を行った。
 「横浜市民の森」内のコナラとシラカシから様々なサイズの種子を採集した。それぞれ重さを計測し、肥料なし/ありに分けて栽培した。展葉直後/当年成長終了後と時期を変えて実生を採取し、展葉日・茎長・根長・根/茎/葉の乾燥重量・葉面積を記録・計測した。
 種子サイズは、種間・サイト間・個体間・個体内の全てのレベルでコナラはシラカシより強いばらつきが検出された。栽培実験では、両種とも元の種子重と実生サイズに係る測値は概ね有意な相関関係にあった。実生乾重量を元の種子重に対して曲線回帰し、これと原点を通る直線が接するときの種子重を親木にとっての最適種子重とした。肥料なしのサンプルから求められた最適種子重は、実際の種子重の最頻値とほぼ同値であった。しかしコナラにおいて肥料を与えた区画では計算上の種子重の最適値は0となった。このことから、コナラは概ね貧栄養条件で更新しているが、富栄養条件で繁殖成功する場合もあるため、種子サイズの変異が維持されていることが示唆された。


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