| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-305 (Poster presentation)
植物の成長や繁殖は様々な因子によって制限を受けている。この制限要因を明らかにすることは、地球環境の変化に伴う大気中の二酸化炭素濃度や温度の上昇に対する植物の応答を予測するうえで重要である。塩性湿原は水深や塩分などの環境が空間的に多様であるために、そこに生育する植物では場所により制限要因が異なる可能性が考えられる。本研究では、二酸化炭素濃度と温度の2因子が、湿原内のどのような場所で植物の種子繁殖を制限しているかを調べた。北アメリカ東海岸の塩性湿原に優占するカヤツリグサ科フトイ属の植物Schoenoplectus americanusの自然集団において、様々な密度の集団にチャンバーを取り付け、二酸化炭素濃度を約2倍に上昇させた。また、高密度に生育する集団について、気温と地温を上昇させた。各処理区において開花茎数割合、花序数、成熟種子数の比較を行った。その結果、S. americanusが低密度に生育する場所では、温度と二酸化炭素は種子繁殖の制限要因とはならないが、高密度に生育する場所では、温度が種子繁殖の制限要因の一つであることが示された。また、温度は種子繁殖形質のうち、開花茎数割合や成熟種子数に影響を及ぼしていることがわかった。本研究の結果は、気温が上昇した場合、湿原植物の生育が良い場所では種子生産が増えるが、密度が低い場所ではその他の環境要因が制限となり気温上昇には応答しないことを示している。一方で、二酸化炭素濃度の上昇に対しては種子生産量は応答しないことを示している。