| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-308  (Poster presentation)

コナラにおける種子食昆虫の動態が種子生産の年変動に与える影響
Effects of population dynamics of seed predators on annual variability in acorn production in Quercus serrata

*溝健太, 立川知恵理, 吉川瑞紀, 龍野眞佳, 平山貴美子(京都府立大学)
*Kenta MIZO, Chieri TACHIKAWA, Mizuki YOSHIKAWA, Manaka TATSUNO, Kimiko HIRAYAMA(Kyoto Prefectural Univ.)

 種子食昆虫の摂食は未熟種子の成長停止脱落や種子の発芽不能を招くため、種子生産に影響を与え、これが種子生産の豊凶を生み出していると考えられている。種子食昆虫には、ある特定の種を摂食するスペシャリストだけでなく、複数の樹種を摂食するジェネラリストも見られる。中でも種子食昆虫がジェネラリストで、種間の豊凶に同調性がない場合、ある種が凶作になっても個体数を抑制することができず、種子生産の年変動に影響している可能性がある。西日本の暖温帯二次林では落葉広葉樹が広がるものの、常緑広葉樹の拡大も見られ、遷移の進行の中で林分内のブナ科樹種の構成割合が変化している。ブナ科堅果を加害する種子食昆虫にはジェネラリストも多く、このブナ科樹木の構成割合の違いは種子食昆虫の加害パターンを変化させ、種子生産パターンに影響している可能性がある。
 本研究ではコナラに着目し、京都市近郊二次林において、主にコナラが優占する林分とコナラと共にアラカシやアベマキが混生する林分の構成割合が異なる2つの林分で、コナラの季節的な雌繁殖器官の落下量や散布前種子食昆虫による加害パターンについて調べ、変動主要因分析を用いて成熟健全堅果生産の年変動に影響している脱落要因を解析した。
 その結果、両林分ともに開花量が多いと成熟健全堅果生産量も多くなる傾向があったものの、調査木間における開花量及び成熟健全堅果の同調性は小さかった。また、開花量と年間雌繁殖器官生産量に対する虫害率、及び開花量前年比と同虫害率に関係性は見られなかった。一方で、変動主要因分析の結果、両林分ともにハイイロチョッキリによる吸汁や産卵による影響が大きく、これら要因が成熟健全堅果生産の年変動にも有意に影響していた。様々な樹種が混生している暖温帯二次林において、コナラの成熟健全堅果の生産量を決めているのは、ハイイロチョッキリの動態が寄与していることが示唆された。


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