| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-320  (Poster presentation)

樹木形状比の可塑性と形質の関係性
Relationships between plasticity of height to diameter ratio and functional traits

*堀内颯夏, 小林勇太, 森章(横浜国立大学)
*Soki HORIUCHI, Yuta KOBAYASHI, Akira S MORI(Yokohama National Univ.)

樹木の高さは光獲得効率と、直径は力学的支持や水輸送効率と深い関係を持ち、両者はトレードオフの関係にある。樹高-直径アロメトリーを推定することはその樹木の成長戦略を知ることにつながる。樹高-直径アロメトリーは森林タイプで異なることが知られており、近年の研究では特に気候の影響を強く受けることが示唆されている。しかし、気候(気温・降水量)が同種内の樹高-直径アロメトリーに与える影響については不明瞭な点が多い。そこで本研究では、日本の冷温帯林を中心に生息する高木7種(ミズナラ、トドマツ、ブナ、イタヤカエデ、ダケカンバ、スギ、ナナカマド)を対象に、全国の毎木調査記録から樹高-直径アロメトリーを推定した。具体的には、各種が生息することができる気候条件の幅(気候ニッチ)を求めた。また気候ニッチの平均的な条件下(気候ニッチセンター)に生息する個体とそうでない個体それぞれで樹高-直径アロメトリーを推定した。
結果として、スギにおいて最大樹高と曲線の傾きに大きな変異が見られた。一方、同じ針葉樹であるトドマツでは大きな変異は見られなかった。今回の対象種の内、スギは気候ニッチが最も広く、トドマツで最も狭かったことから、それぞれの樹種の持つ気候ニッチの広さとアロメトリーの変異には関係があることが考えられる。また、対象樹種の多くで、気候ニッチセンターに生息する個体は肥大成長を優先することが示された。冷温帯は環境条件の厳しさから生存できる種がそもそも制限されるため、他種との光をめぐる競争への投資より、資源利用の効率を優先する可能性が考えられる。また、スギ以外の樹種において最大樹高に大きな変異は確認されなかった。このことは、最大樹高は気候要因よりむしろ積雪や風などの物理的要因から大きく制限されることが考えられる。


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