| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-321 (Poster presentation)
温暖化に伴う積雪量の減少と消雪時期の早期化は多雪地の植生の更新にリスクを及ぼしうる。開葉時期は消雪時期に左右されるが気候や樹種構成が同じ調査地間で消雪時期のみ調節した開葉フェノロジーの研究はほとんどなく、多雪地での消雪時期の早期化による影響はよくわかっていない。多雪地月山において3mの深さの雪をスコップで除雪することに消雪時期をコントロールしてフェノロジーへの影響を調べた。調査地は月山ブナ林で10×10mのプロットを1プロットずつ設け、片方を除雪した。積雪深、気温、地温、土壌水分、光の変化、樹木に対しては樹液流速を計測した他、130cm以上の樹種の開葉、落葉時期を記録した。冬季に積雪下における3m以下の中で多く見られた主な樹木(ブナ、オオカメノキ、オオバクロモジ)を冬芽状態から開葉した葉面積を継続して計測した。また消雪後に両プロットの実生の生存数、樹種を記録した。多方面からサイトを比較することで除雪がどういった項目に影響を強く与え、積雪量の減少で起こりうる森林のフェノロジーの変化を検討した。
最初に高層木が一斉に開葉開始し、除雪区の低層木は除雪後32日、非除雪区の低層木は消雪後4日で開葉した。非除雪区は除雪区と比べて葉面積が全体的に小さくなり、オオカメノキの葉面積ピーク日は除雪区ではブナの5日後、非除雪区ではブナの3週間後に到達した。除雪区では生存実生が少なく、枯死ブナは多かった。通常の多雪地ではブナは消雪後に、他の樹種より早く開葉開始し葉面積ピークも早いため光環境が優位な状態での開葉が可能だった。除雪により除雪区の全低層木が早春の林冠が閉じきっていない時期に開葉し大きな光を得られたが、低層木ブナのみの光の独占期間が短くなった。またブナ実生が多く枯死し更新が困難になると予測され、消雪時期の早期化により多雪地でのブナの利点が小さくなることが示唆された。