| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-322  (Poster presentation)

ミヤマハタザオの標高による一年生/多年生の違いは遺伝的か? 【B】
Perennial and annual life histories in Arabidopsis kamchatica along elevation: genetic diference? 【B】

*川本晟司, 芳澤あやか, 關岳陽, 田中健太(筑波大・山岳セ)
*Seiji KAWAMOTO, Ayaka YOSHIZAWA, Takeharu SEKI, Tanaka KENTA(MSC, Univ.Tsukuba)

生物には、多回繁殖性と一回繁殖性という異なる生活史が存在する。こうした生活史戦略の進化は主に理論研究・種間比較研究・室内進化実験によって研究されており、単純な比較が行える種内の生活史変異を研究した例は限られている。アブラナ科草本のミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica ssp. kamchatica)は中部地方の0~3000mという広い標高帯に生息し、高標高集団は典型的な多年生植物なのに対し、低標高集団は一年生に近い生活史を送ることが著者らのグループによって明らかとなっている。そのため、種内で標高に沿った生活史進化を研究できる材料として有望である。しかし、こうした一年草/多年草といった生活史の違いが遺伝的なのか、表現型可塑性によるのかは、厳密には確かめられていない。そこで本研究では、標高間でみられる生活史の違いが遺伝的なのか検証することを目的とした。また、一年草型の集団も、夏場の高温が穏やかな日陰では複数年生存することから、熱ストレスが一年草型の生活史の引き金となっているかどうかもあわせて検証した。
標高87~2822mのミヤマハタザオ5集団に由来する計87個体を、昼20度・16時間、夜17度・8時間の条件で栽培した。抽苔して繁殖開始から2週間後には昼温度のみが20・28・36度と異なる3条件区を設定し、各集団の個体がなるべく等数になるように分配し、繁殖終了後に乾燥重量を計測し、一年草度合いの指標として地上部/地下部比や繁殖器官/栄養器官比を求めた。
昼36度では、低標高由来の集団ほど地上部への資源配分が多かった。低標高ほど一年生に似た生活史を送るという野外のパターンが遺伝的差違に基づくことが確認された。また低標高集団では、昼温度が高いほど、地上部への資源配分が多く、繁殖に資源投入する一年草的な性質が熱ストレスによって誘導される可能性が示された。


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