| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-331  (Poster presentation)

フタバガキ科樹木における吸水深度の種間比較
Interspecies comparison of water uptake depth in Dipterocarpaceae trees

*勝浦柊(名古屋大学), 松尾奈緒子(三重大学), 中川弥智子(名古屋大学)
*Hiiragi KATSUURA(Nagoya Univ.), Naoko MATSUO(Mie Univ.), Michiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.)

東南アジア熱帯雨林では、気候変動によって乾燥の強度と頻度が増加すると予測されており、森林生態系への影響が懸念されている。そのため、樹木の乾燥ストレス耐性について理解を深めることは、東南アジア熱帯雨林の気候変動への応答予測に重要である。東南アジア熱帯雨林では、地上部の水利用に関する研究は盛んに行われてきたが、地下部の吸水特性に関しては未解明の部分が多い。そこで、本研究ではマレーシア・サラワク州に位置するランビルヒルズ国立公園内の低地混交フタバガキ林において、林冠を構成する主要なフタバガキ科3属各2種(Dipterocarpus globosus, Dipterocarpus pachyphyllus, Dryobalanops aromatica, Dryobalanops lanceolata, Shorea beccariana, Shorea smithiana)の成木を対象に、吸水深度の種間差および種内個体間差について検証した。吸水深度の推定は、土壌水の深度による酸素安定同位体比の勾配と導管水の酸素安定同位体比を照合することによって行った。
多重比較の結果、種間に吸水深度の差が認められた。また、Dipterocarpus属では2種とも吸水深度が深く、Shorea属では2種とも吸水深度が浅い傾向があり、吸水深度が類似していたことから、吸水深度が系統関係に影響を受けることが示唆された。一方、Dryobalanops属では2種で吸水深度が異なったが、これらの種は生育環境が異なることが知られていることから、根系が異なる生育環境に適応して進化したため、吸水深度が異なったと考えられる。また、吸水深度には種内個体間差もみられ、D. aromaticaでは個体が生育する場所の土壌表層の含水率が低いほど、吸水深度が深い傾向がみられたことから、局所的な生育地環境の違いに応じても吸水深度が異なることが示唆された。


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