| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-340  (Poster presentation)

ヒメツリガネゴケの環境ストレス下での応答
Response of Physcomitrella patens under environmental stress

*中澤誠(京都工芸繊維大学), 横井真希(北海道大学), 藤田知道(北海道大学), 新濱梨奈(富山大学), 浅野加杜己(富山大学), 蒲池浩之(富山大学), 唐原一郎(富山大学), 久米篤(九州大学), 小野田雄介(京都大学), 笠原春夫(宇宙航空研究開発機構), 鈴木智美(宇宙航空研究開発機構), 嶋津徹(日本宇宙フォーラム), 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Makoto NAKAZAWA(Kyoto Institute of Technology), Maki YOKOI(Hokkaido Univ.), Tomomichi FUJITA(Hokkaido Univ.), Rina SHINHAMA(Toyama Univ.), Kazuki ASANO(Toyama Univ.), Hiroyuki KAMACHI(Toyama Univ.), Ichiro KARAHARA(Toyama Univ.), Atsushi KUME(Kyushu Univ.), Yusuke ONODA(Kyoto Univ.), Haruo KASAHARA(JAXA), Tomomi SUZUKI(JAXA), Toru SHIMADU(Japan Space Forum), Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

【目的】
宇宙環境で生育する植物に影響を与える環境ストレスとして乾燥ストレスと微小重力ストレスに着目し、光合成速度測定や形態観察を行うことで、ヒメツリガネゴケのストレス応答メカニズムを解明する。
【材料・方法】
材料:ヒメツリガネゴケ
方法:[乾燥実験]ヒメツリガネゴケの茎葉体を室温で6時間または24時間乾燥させ、乾燥後に再潅水する処理を行った。乾燥期間中および再潅水時に、ガス交換装置を用いて光合成速度などを測定した。ヒメツリガネゴケの乾燥前の葉と乾燥後再潅水させた葉を用いて、光学顕微鏡で観察し、葉緑体サイズの比較などを行った。
[微小重力実験]国際宇宙ステーションにて、微小重力でヒメツリガネゴケを25日間栽培する実験を2回行った。その後、同様に光合成速度などを測定した。
【結果と考察】
[乾燥実験]光合成速度は乾燥時間の経過に伴って低下し、6時間乾燥後には乾燥前の約21%、24時間乾燥後には乾燥前の約6%まで低下した。再潅水実験において、6時間乾燥後の再潅水では、光合成速度が乾燥前の約35%まで回復したのに対し、24時間乾燥後の再潅水では乾燥前の約22%までしか回復しなかった。このことから、ヒメツリガネゴケは乾燥時間の長さに比例して光合成速度の低下が起こり、再潅水による光合成速度の回復力も、乾燥時間が長いと低下するといえる。形態観察では、乾燥後再潅水させた葉では葉緑体が潰れて見え、細胞内で細胞壁に寄っているものが多く、葉緑体サイズは有意に小さくなっていた。細胞内の葉緑体が脱水により縮小し、再潅水処理後も元の大きさまで戻らず、機能も回復していないことが、乾燥による光合成速度の低下の原因であると考えられる。
[微小重力実験]1度目の実験では微小重力で光合成が低下したが、2度目の実験ではそのような結果は得られなかった。今後さらに様々な形質の解析をすすめ、微小重力が植物に与える影響を解明したい。


日本生態学会