| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-340 (Poster presentation)
【目的】
宇宙環境で生育する植物に影響を与える環境ストレスとして乾燥ストレスと微小重力ストレスに着目し、光合成速度測定や形態観察を行うことで、ヒメツリガネゴケのストレス応答メカニズムを解明する。
【材料・方法】
材料:ヒメツリガネゴケ
方法:[乾燥実験]ヒメツリガネゴケの茎葉体を室温で6時間または24時間乾燥させ、乾燥後に再潅水する処理を行った。乾燥期間中および再潅水時に、ガス交換装置を用いて光合成速度などを測定した。ヒメツリガネゴケの乾燥前の葉と乾燥後再潅水させた葉を用いて、光学顕微鏡で観察し、葉緑体サイズの比較などを行った。
[微小重力実験]国際宇宙ステーションにて、微小重力でヒメツリガネゴケを25日間栽培する実験を2回行った。その後、同様に光合成速度などを測定した。
【結果と考察】
[乾燥実験]光合成速度は乾燥時間の経過に伴って低下し、6時間乾燥後には乾燥前の約21%、24時間乾燥後には乾燥前の約6%まで低下した。再潅水実験において、6時間乾燥後の再潅水では、光合成速度が乾燥前の約35%まで回復したのに対し、24時間乾燥後の再潅水では乾燥前の約22%までしか回復しなかった。このことから、ヒメツリガネゴケは乾燥時間の長さに比例して光合成速度の低下が起こり、再潅水による光合成速度の回復力も、乾燥時間が長いと低下するといえる。形態観察では、乾燥後再潅水させた葉では葉緑体が潰れて見え、細胞内で細胞壁に寄っているものが多く、葉緑体サイズは有意に小さくなっていた。細胞内の葉緑体が脱水により縮小し、再潅水処理後も元の大きさまで戻らず、機能も回復していないことが、乾燥による光合成速度の低下の原因であると考えられる。
[微小重力実験]1度目の実験では微小重力で光合成が低下したが、2度目の実験ではそのような結果は得られなかった。今後さらに様々な形質の解析をすすめ、微小重力が植物に与える影響を解明したい。