| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-342 (Poster presentation)
【背景・目的】林床は光が限られた環境であるため、樹木には受光の効率を高められるような選択圧がはたらいている。効率の良い受光のためには、葉の自己被陰を弱めることと植物体の構造にかかるバイオマス量を減らすことがあげられる。常緑樹は去年までに展葉した葉の一部を残したまま当年生シュートを伸ばすため、葉の自己被陰を減らすために当年枝を長くする必要があると考えられる。一方で、枝を長くするために必要なバイオマス投資を抑えるために、材密度を低くしている可能性がある。本研究では林床の樹木の一次シュート系を対象とし、落葉樹と常緑樹における去年までの一次シュート系の形態に応じた当年生シュートの形態と葉の受光量の違いに着目して調査を行った。
【方法】愛知県の豊田市自然観察の森に自生する落葉樹5種と常緑樹5種において、主幹から伸びる一次シュート系を用いた。一次シュート系からランダムに葉を選び、オプトリーフを用いて受光量を測定した。一次シュート系内における当年生シュートの枝長、枝乾燥重量、葉数、総葉面積、葉乾燥重量および去年までの一次シュート系の葉数、総葉面積、枝と葉の合計の乾燥重量を測定した。
【結果・考察】個体別での当年生シュートの枝長と総葉面積の関係は、斜行シュートを持つ種と直立シュートのみを持つ種で異なっていた。直立シュートのみを持つ種では一部もしくはすべての個体で有意な相関がみられなかった。常緑・落葉別では、当年生シュートの枝長と総葉面積の関係および枝長と枝乾燥重量の関係の両方において、落葉樹・常緑樹ともに有意な相関がみられず、常緑・落葉間の違いを説明できなかった。また受光率(一次シュート系の乾燥重量当たりの受光量)は種間で有意な差が見られなかった。
今回の結果から、弱光下における種間の受光率に違いは見られなかったが、受光戦略についてはシュートの仰角を考慮して検証する必要性があることが示唆された。