| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-348 (Poster presentation)
ほとんどの植物は光合成によってエネルギーを作る独立栄養性を示す。しかし、特異な例として、菌に寄生し、光合成を行わずに生育する菌従属栄養や、光合成を行いつつ菌からも栄養を得る混合栄養を行う植物も存在する。菌依存度の上昇に伴い、さまざまな形態的、生態的な変化がみられることが知られているが、詳細は不明である。ラン科シュンラン属には、属内に独立栄養の種、混合栄養の種、菌従属栄養の種が含まれるため、栄養段階の進化に伴う様々な変化を属内で比較可能である。そこで、本研究では、シュンラン属シュンランを利用することで、混合栄養植物が菌へ依存する仕組みを解明することを目的とした。まず、菌依存度がどのような条件の影響をうけるかを調べるため、シュンランの同位体比と環境条件の関係を調べた。なお、本研究では個体の菌依存度の指標として炭素同位体比(δ13C)と窒素同位体比(δ15N)を用いた。その結果、δ13Cは開空度や降水量と相関を示した。一方でδ15Nはどのような要素とも相関を示さなかった。しかし、δ13Cと環境要因の相関は、水ストレスの影響であると考えられた。これらのことから、菌依存度は環境条件により調節されていない可能性が示された。一方で、株の大きさと同位体比の関係から、出芽直後の個体では多くの栄養を菌から得ている可能性が示された。また、菌依存度が環境の変化の影響を受けるか否か調べるために、シュンランに遮光ネットをかぶせ、光合成を阻害した。遮光した個体と遮光していない個体で同位体比を比較した結果、遮光の前後や遮光の有無で同位体比に違いは見られなかった。このことから、シュンランは光環境の変化では、菌依存度を調整しない可能性が示された。本研究の結果から、混合栄養植物であるシュンランは、生育段階に応じて菌依存度が変化するものの、周囲の環境に応じて菌依存度を変化させていないことが示唆された。