| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-349  (Poster presentation)

塩ストレス条件下における街路樹の生理学的応答の比較
The comparison of physiological responses between roadside trees under salt stress

*筒井悠理, 前田耕治, 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Yuri TSUTSUI, Kohji MAEDA, Yuko T HANBA(Kyoto Institute of Technology)

街路樹に求められる機能には、街並みの装飾だけでなく、光合成によるCO2吸収、蒸散による冷却などがある。街路樹は、自然環境で生育している樹木とは異なる様々なストレスにさらされており、そのうちの一つである塩ストレスは植物の呼吸、光合成および蒸散に深刻な影響を引き起こす。近年、地球温暖化に起因する台風の大型化により、海岸部から内陸部にまで海水が巻き上げられ街路樹の葉が枯れる塩害が報告されており、都市部における今後の植栽計画において、塩ストレス耐性が評価の基準となる可能性がある。しかしながら、国内で街路樹の塩ストレス耐性を調べた研究は少ない。本研究では、わが国の代表的な街路樹4 種を用いて、塩ストレスがある環境での植栽に適した樹種の判別を目的とした。イチョウ、ヤブツバキ、マルバシャリンバイ、ヒラドツツジの4 種を学内の温室で栽培し、塩ストレスとして、週3 回、約3 週間にわたり、水道水の代わりに50 mM NaCl水溶液約150 mlを与えた。塩処理前と塩処理後の葉を用いてLi-6400XTによるガス交換測定を行い、A-Ci曲線を作成して光合成速度、気孔コンダクタンス、蒸散速度などの光合成機能を測定した。また、プレッシャーチャンバーを用いた通水機能(葉の水ポテンシャル)の測定や、ICPE-9820を用いた葉内Na量の測定も行った。実験の結果、光合成機能と水分状態を維持したヤブツバキとマルバシャリンバイが塩ストレスがある環境での植栽に適した街路樹であることが示された。一方、水分状態を維持できなかったイチョウと、水分状態に加え、光合成機能も維持できなかったヒラドツツジは、塩ストレスがある環境では街路樹としての植栽には適さない可能性がある。イチョウとヒラドツツジの2 種は葉内Na量が有意に増加していたため、葉におけるNaの蓄積が生理学的機能に負の影響を与えていることが示唆された。


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