| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-351 (Poster presentation)
背景
水生植物の中には、水に溶けにくいCO2を補うためにHCO3—を合成するC4回路やCAMをもつものがあることが報告されている(Yin et al. 2016)。しかし、抽水する植物や日本の水生植物について同じ機構を持つかは分かっていない。本研究では日本の水田で見られる10種の抽水小型雑草に対し実験を行った。①昼夜酸性度差;②水中の無機炭素量の推定といった実験により、光合成において水中の無機炭素をどのように利用しているのかを調査した。
材料
アゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナ、スズメノトウガラシ、アゼトウガラシ、サワトウガラシ(熊本県、広島県、愛媛県産3集団)、マルバノサワトウガラシ、デンジソウ、ウリカワ、キクモ(SU剤抵抗性型と同感受性型)
方法
供試植物0.2~0.3gを、KHCO3(1mM)とNaHCO3(1mM)を等モルで混合した溶液50mlに冠水させ、明条件24時間(pH7.5)、暗条件18時間(pH6.4)で25℃の恒温器で培養した。①昼夜酸性度差:培養後に刻んで超純水に入れ、15分熱水で湯煎して、酸性物質を抽出し室温でNaOH (0.01M)でNaOHでpH8.3に調整。その量を記録した。②無機炭素量の推定:①で供試植物を除いたサンプル溶液40mLにHCl (0.1mol/L) を加え、pH7.6~6.7とpH4.4~3.7の間の変動を記録した。この数値を元にアルカリ度を算出、アルカリ度と開始pHを元にMackereth et al. (1978) の計算式からCO2, HCO3—の量を算出し、培養前の溶液と比較することで無機炭素使用量を推定した。
結果および考察
実験①よりアゼトウガラシ、3産地のサワトウガラシ、マルバノサワトウガラシ、ウリカワの昼夜酸性度差は大きく、CAM植物である可能性が高い。サワトウガラシ以外において前例の研究はない。マルバノサワトウガラシはサワトウガラシと同族で、系統的にCAMを持つと思われる。実験②では、反応前後の変化は少なく、HCO3—を十分に使用できていないためC4植物は見つからなかった。また、CAM植物もPEPCを持っているが昼間はCO2を用いてC3植物と同じように光合成をしている。