| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-352  (Poster presentation)

コナラ属落葉高木における萌芽再生能力と潜伏芽との関係
Relationship between resprouting ability and dormant bud in oak species.

*平方広大, 本間航介(新潟大学)
*Kodai HIRAKATA, Kosuke HOMMA(Niigata Univ.)

 樹木の萌芽再生能力はサイズに依存して変化することが知られている。大径化した個体の萌芽再生能力は、同化部・非同化部バランスの悪化などにより制限されるとされてきた。一方で、萌芽枝の原基である潜伏芽(dormant bud)の不足により制限されている可能性も考えられるが、萌芽再生能力と潜伏芽との関係は十分に検討されていない。本研究では大径化したコナラ属落葉高木における萌芽再生能力と潜伏芽との関係を明らかにすることを目的とした。2019年3月に胸高直径が約30cmのコナラ11個体を伐採し、同年8月中旬にかけて萌芽再生能力(萌芽枝長)と潜伏芽数を記録した。また、伐採したコナラのうち4個体(萌芽株・無萌芽株2個体ずつ)の地際部を用いて、過去の潜伏芽数の推移を推定するため、潜伏芽が樹体内に残す痕跡(bud trace)をX線CT装置によって解析した。
 潜伏芽が確認されたすべての個体で萌芽枝が形成された一方で、潜伏芽が確認されなかった個体では萌芽枝も形成されなかった。また、株あたりの潜伏芽数と萌芽枝長との間には強い正の相関が示された。bud trace数を年輪とともに解析した結果、加齢に伴いbud traceの数が減少していたことが全ての個体で共通してみられた。萌芽株では多数のbud traceが樹皮まで到達していたが、無萌芽株では樹齢約50年にはすべてのbud traceが消失していた。また、無萌芽株は萌芽株に比べて、髄付近のbud trace数が少ないことが分かった。また、一部の個体では成木段階で短期間のうちにbud traceが急減していた。
 以上の事から、大径化したコナラの萌芽再生能力は利用可能な潜伏芽数によって規定されている可能性が高いことが示唆された。また、大径木における利用可能な潜伏芽数は、稚樹段階の潜伏芽数や成木段階での潜伏芽急減の有無によって規定されており、稚樹段階の生育環境や成木段階の成長特性によって影響を受けていると考えられた。


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