| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-353 (Poster presentation)
樹木の萌芽には、潜伏芽から発生する潜伏芽由来のものと形成層から分化し発生する不定芽由来のものとあるが、一般に広葉樹には潜伏芽由来のものが多いと経験的に言われている。潜伏芽のみから萌芽再生を行う樹種の場合、その樹木が萌芽展開する数の最大値、つまり萌芽再生ポテンシャルは樹体に蓄える潜伏芽数と一致すると考えることができる。そこで本研究では、ブナ林主要構成種4種(ハリギリ、ホオノキ、ブナ、アカイタヤ)の潜伏芽貯蔵様式の多様性を示すことを目的とし、潜伏芽数の部位ごとの違いや時系列ごとの推移を調査した。
4樹種の小径木、中径木各1本の計8個体の主根および地際部~高さ5mの部位を対象とし、目視による潜伏芽数をカウントした。また小径木の外形24cmの部位の計22サンプルをX線CTにより樹木内部の潜伏芽の痕跡(bud trace)の計測を行ったあと、simple neurite tracerを用いてbud traceを3次元的に可視化した。
ハリギリは1個体あたりの潜伏芽数が10個と全体的に少なく経年により減少する傾向がみられたことから、萌芽再生力が乏しいと推測された。ホオノキは1個体あたりの潜伏芽数が200個と特に地際部に多く経年により減少する傾向がみられたことから、特に地際部からの萌芽再生力が大きいと推測された。ブナは1個体あたりの潜伏芽数が71個と特に地際部に少なく経年により維持される傾向がみられたことから、特に地際部からの萌芽再生力が乏しいと推測された。アカイタヤは1個体あたりの潜伏芽数が405個と全体的に多く経年により維持される傾向がみられたことから、地下部を除くどの部位も萌芽再生力が大きいと推測された。
ブナの地際には潜伏芽がほとんどみられなかったが、実際の多雪地環境におけるブナはホオノキ、アカイタヤよりも優占度が高いことから、この要因には地際からの萌芽以外の要素が関係していると推測された。