| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-357 (Poster presentation)
街路樹は町並みを彩るだけでなく、CO2吸収、大気汚染物質の吸着など様々な機能を果たすことが期待されている。しかし都市環境ストレスは光合成機能低下をもたらし、街路樹としての機能を損なう恐れがある。そこで京都市内を調査地とし、環境ストレスの中でも大気汚染に注目して、交通量の違いにより汚染レベルが異なる地点間の光合成機能を比較した。2017年度の調査対象は京都市内に多く植栽されているヒラドツツジ、イチョウ、シャリンバイ、アジサイの4樹種とした。2018、2019年度は樹種をヒラドツツジのみに絞りさらに調査地点を増やして比較を行なった。
光合成機能測定はLi-6400 XT(LI-COR社)を用いて行い、光合成パラメータA400、J、Vcmax、gsを算出した。また、イチョウとヒラドツツジの葉について、長期の水利用効率(WUE)の指標となる炭素安定同位体分別(Δ13C)を葉の炭素安定同位体比(δ13C)より算出した。調査地点の環境についても調べた。植物に悪影響を与えるとされる大気汚染物質O3は京都市内で環境基準を超える濃度が検出されている。そこで、2017年度は大気中O3濃度を測定した。2018年度は土壌に含まれる重金属などの元素量を測定した。また京都市が提供する気象や大気環境に関するデータも参照した。
その結果、4種のうちヒラドツツジは交通量増加に伴う大気汚染ストレスにより光合成の生化学的機能が低下する可能性が最も高いと考えられた。シャリンバイやイチョウの光合成機能は大気汚染ストレスによる影響を受けていなかった。また、京都市内において、O3や土壌中の重金属元素が光合成機能に影響していると考えられる結果は得られなかった。
街路樹の植栽にあたり、ヒラドツツジよりもストレスに強いシャリンバイやイチョウの数を増やすことが街路樹のCO2吸収の役割を高める上で重要と考えられる。