| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-361 (Poster presentation)
菌従属栄養植物は菌を消化して得た有機物を利用する性質を持ち、中でも光合成と菌の両方を有機物源とするものは部分的菌従属栄養植物と呼ばれる。ラン科における部分的菌従属栄養植物は、主に外生菌根菌と共生していることが知られており、このような種は、ラン科植物にとっては一般的な菌根菌である腐朽性のリゾクトニアと共生していたグループが菌依存性を次第に高め、より良い寄生相手である外生菌根菌へと宿主を乗り換えたことで進化したと考えられている。そのため、リゾクトニアと共生し、部分的菌従属栄養性を示すランが存在するとされ、先行研究でもその実在が示されている。一方でこうしたラン科植物がどれほど一般的かは明らかではない。本研究では、DNAバーコーディングと安定同位体分析を用いてラン科植物の共生菌と栄養摂取様式を調査し、部分的菌従属栄養性を示すリゾクトニア共生種の普遍性について議論する。
4県9地点において複数設定した1m×1mのプロットからランと独立栄養植物を採取した。DNAバーコーディングではランの菌根から抽出した菌DNAのITS2領域をMiSeqによりシーケンシングし、得られた配列から設定したOTUをCLAIDENTによって同定した。安定同位体分析ではランと独立栄養植物の葉の炭素・窒素安定同位体比(δ13C、δ15N)を測定し、両者の同位体比を比較した。
DNAバーコーディングを行ったランの菌根からはリゾクトニアが検出されたが、全リード数に対するリゾクニアの割合は種ごとに大きく異なった。δ13C、δ15Nを分析した結果、多くの種はδ15Nが高く、δ13Cは独立栄養植物との差が見られないか、低い値を示した。一般的に、部分的菌従属栄養性を示す植物はδ13C・δ15Nが独立栄養植物より高くなるが、これらの種ではδ15Nのみに差があるため、慎重な評価が必要となる。一方、シュスラン連に属する4種においてはδ13C・δ15Nがともに独立栄養植物より高い値を示すことが確認され、部分的菌従属栄養性が示唆された。