| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-362  (Poster presentation)

異なるpH条件下のヨモギ根圏におけるヒ素の挙動
Arsenic behavior in the Mugwort rhizosphere under different pH conditions

*岸本ゆりえ, 竹中千里(名古屋大学大学院)
*Yurie KISHIMOTO, Chisato TAKENAKA(Nagoya Univ.)

 ヒ素は建設発生土から検出されることが多い自然由来の有害元素である。建設発生土のような土壌は工事に伴うセメント混入によりアルカリ化していることがある。このような汚染土壌へのファイトレメディエーションの適用性を調べた予備実験において、ヨモギ(Artemisia indica)をアルカリ性のヒ素汚染土壌で栽培したところ、無植栽土壌と比較して土壌からの流出水のpHの低下傾向と、溶出するヒ素の減少傾向が確認された。ヒ素は環境中で主に5価のヒ酸、または3価の亜ヒ酸として存在する。土壌や鉱物表面へのヒ素の吸着に関する先行研究によると、一般的な土壌pH範囲(pH3-8)において、ヒ酸はpH上昇と共に溶解度が増加、亜ヒ酸はpH低下と共に溶解度が増加すると報告されている (Walter et al., 2002)。本研究ではヨモギによるヒ素の安定化にpHが関係していると仮定し、異なるpH環境下で生育したヨモギの根圏で、ヒ素がどう変化をするのかを明らかにすることを目的とした。
 1/10Hoagland’s溶液をpHが約4, 6, 8となるようにHCl、NaOHで調整し、そのそれぞれに水耕液中のヒ素濃度が0.1 mg/Lとなるようにヒ酸ナトリウム水溶液を添加し、実験の水耕液とした。これら異なるpHの3処理区(pH4, pH6, pH8)でヨモギを1カ月間生育させた。水耕液は常にエアポンプで充分に通気し、酸化的な条件で栽培した。実験前と1カ月間の処理終了後に水耕液の pHをガラス電極法で、溶存ヒ素濃度をICP-AESでそれぞれ測定した。植物体については処理終了後に地上部と地下部に分け、80℃で48時間以上乾燥させた後湿式灰化し、ICP-MSで分析し、植物中のヒ素濃度を測定した。
 水耕液中に溶存していた水溶態ヒ素の含有量は、1カ月の処理終了後、いずれの処理区においても実験前の約39~55%ほどとなり、水耕液のpHは7近辺であった。また処理終了後の植物体には、地上部・地下部共にヒ素が蓄積されていた。植物体にヒ素が吸収・付着されたことで、水耕液中の水溶態ヒ素が減少した可能性がある。


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