| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-364  (Poster presentation)

鉱山跡地に自生するアオキ (Aucuba japonica Thunb.) の重金属耐性機構と内生菌の関与
Mechanism of heavy-metal tolerance in Aucuba japonica Thunb. growing naturally at mine site and the possible function of root endophyte

*土山紘平(筑波大学・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境), 春間俊克(原子力機構, 筑波大学・生命環境)
*Kohei DOYAMA(Univ. of Tsukuba), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Toshikatsu HARUMA(JAEA, Univ. of Tsukuba)

鉱山跡地に自生する植物は、植物組織内に無病徴で感染する微生物(内生菌)が根に感染することで金属耐性を獲得することが知られている。調査地は土壌中に重金属元素を含有し酸性を呈するため、植物は金属ストレスを受けやすい環境となっている。アオキは調査地に多数自生しており、根に高濃度のZn(500 mg/kg DW以上)およびAl(1000mg/kg DW以上)を蓄積することから、何らかの金属耐性を有していると考えられる。また、アオキの根からは内生菌であるCryptosporiopsis属糸状菌が高頻度に分離され、本菌がアオキの金属耐性に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。
アオキの金属耐性に関与するCryptosporiopsis属糸状菌の機能を解明するため、アオキの無菌実生およびγ線滅菌した調査地土壌を用い、本菌の接種試験を実施した。その結果、アオキ実生の根ではZnの蓄積は確認されず、接種区および非接種区ともにAlの蓄積が確認され、接種区において有意に高かった。また、非接種区では全根端数の92.1%に壊死が確認されたが、接種区では63.0%の根端に壊死が確認され、非接種区に比べ低い傾向が確認された。よって、本菌の感染がアオキ実生の根におけるAl毒性を低減する可能性が示唆された。今後は、本菌が産生するAl解毒物質をアオキ実生の根で検出するとともに、根におけるAlの局在を接種区および非接種区で比較することで、本菌がアオキ実生のAl耐性に及ぼす影響を詳細に明らかにする予定である。しかし、1)一部の接種個体では本菌が病原性を示したこと、2)調査地に自生するアオキ実生では根端の壊死等の生育阻害が確認されていないことから、本接種試験は野外でのアオキ実生と本菌の共生系を反映していないと考えた。ゆえに、本菌の前培養条件および接種方法を検討し、再度接種試験を実施する必要がある。


日本生態学会