| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-376 (Poster presentation)
温暖化対策として再生可能エネルギーの導入が推進されている中で、北海道と東北地方は風況が良好であることから、風力発電の導入計画が最も多い。その一方で、上記地域はガン・ハクチョウ類の主要な集団飛来地が集中しており、風車への衝突死や回避による迂回コストの増加などの影響が懸念される。影響低減の方法として、風車に対する鳥類の衝突リスクを“見える化”したセンシティビティマップの整備が有効とされている。環境省が公開しているセンシティビティマップでは、ガン・ハクチョウ類の衝突リスクは集団飛来地における個体数情報に基づき評価されており、渡りルート上の衝突リスクについては考慮されていない。そのため、渡りルート上において風車への衝突リスクが高い環境の抽出が急務となっている。本研究では、オオヒシクイ、マガン、コハクチョウ、およびオオハクチョウの4種を対象とし、それぞれのセンシティビティマップを作成することを目的とした。はじめに、主要な集団飛来地が分布する新潟県から北海道にかけて、渡りの群れが確認された位置情報を取得し、その最外殻を結んだエリアを渡りルートとした。次に、位置情報と飛行高度の数値情報を連続的に取得できる測距器を使用し、渡りルート上における飛行高度を計測した。LASSO正則化を用いた一般化線形モデルを作成し、飛行高度と景観・地形要因との関係を調べたところ、いずれの種においても、地形の起伏や通過してきた山地の標高が飛行高度を規定する主要な要因であった。最後に、上記統計モデルを渡りルート上に外挿し、予測された4種の飛行高度を、風車ブレード以下、風車ブレード回転域、風車高以上の3つの高度に区分することにより衝突リスクを表現した。衝突リスクが最も高いと予測されたのは、標高差が大きい山際や山間部であった。講演では、本研究で作成したガン・ハクチョウ類のセンシティビティマップの運用方法について提案する。