| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-377 (Poster presentation)
「再エネ海域利用法」が施行されたことを受け、洋上風車の導入が急速に進むことが予見され、風車ブレードに対する海鳥の衝突や繁殖環境の劣化が懸念されている。海鳥にとって衝突リスクの高い海域における風車建設を未然に防ぐためには、風車立地選定の段階で利用海域を可視化したセンシティビティマップの活用が有効となる。コアジサシは絶滅危惧II類に指定されており、繁殖地が、洋上風車建設適地となる沿岸域に主に形成されることや、海外では既に風車衝突事例が発生していることを考えあわせると、センシティビティマップの作成手法の開発およびその整備が喫緊の課題となっている鳥種といえる。
本研究では、まず、新潟西港における直接観察および文献情報から取得されたコアジサシの行動パラメーター、食性情報、および繁殖特性から採餌モデルを作成し、取得エネルギー量/消費エネルギー量比が1以上となる採餌距離を明らかにした。次に、全国におけるコロニーポテンシャルをハビタットモデリングにより予測し、抽出されたコロニー適地から採餌距離バッファを発生させることで、本種のセンシティビティマップを作成した。
採餌距離について、ヒナの成育および親鳥の生存を保証する海域は8.2km~15.3km以内であることが推定された。また、コロニー適地について、裸地面積、標高のばらつき、森林面積、および大河川の河口までの距離といった環境変数がモデルへの影響力が強く、AUC= 0.92と予測精度の高いモデルが作成できた。さらに、本公演では、風車立地予定地とコアジサシの利用海域との関係性や本研究で作成されたマップの妥当性について考察する。