| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-381  (Poster presentation)

森林の景観構造が野生動物に与える影響〜数理モデルによる解析〜
The effect of landscape structure on wildlife in forest -analysis by mathematical model-

*菅野友哉, 谷内茂雄(生態学研究センター)
*Tomoya KANNO, Shigeo YACHI(Center for Ecological Research)

 近年、日本の森林は開発や放置林など様々な問題を抱えている。そのため森林内部に生息する動物(以下、森林性動物または動物)を保護するためには、適切な生息地をデザインする必要がある。本研究では森林性動物の保全を念頭に、森林の景観構造が動物の個体群に与える影響を数理モデルによって検討する。特に、森林とその外部環境の境である林縁(forest edge)の役割に着目した。林縁付近では外部環境の影響が大きくなり、いわゆる林縁効果(edge effect)が発生する。そのため林縁の拡大により森林性動物は多くの場合、負の影響を受ける。
森林とギャップの配置といった空間的な景観構造を表現するために格子モデルを使用した。森林性動物の個体群密度、森林とギャップ(森林以外の環境)の面積を変数として、伐採、コリドーの設置が動物の個体群に与える影響をシミュレートした。
1)伐採区画の形の影響:林縁効果を考慮しない場合には、小さな伐採地を多数設置するよりも、大きな伐採地を少数設置する方が動物に与える負の影響は大きいことが示された。しかし林縁効果を考慮した場合では、伐採地の大きさによる個体数の差があまり見られなかった。一方、あらかじめ森林内に伐採しない区画(非伐採区画)を設定すると、同じ伐採面積でも森林性動物の個体数が増加し、特に非伐採区画の配置を格子状に設置した場合に個体数が最も多くなった。
2)2つの生息地をつなぐコリドーの幅と数の影響:林縁効果を考慮しない場合には、コリドーの数を増やしても森林性動物の移動割合は変化しなかったが、林縁効果を考慮した場合には、林縁感受性が高い森林性動物では移動割合が減少した。
以上の結果から、同面積の森林でも伐採の仕方、非伐採区画の形、コリドーの配置、林縁感受性の大きさによって、動物の個体数が大きく変化することが示唆された。


日本生態学会