| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-382  (Poster presentation)

絶滅危惧種セタシジミの生息状況の把握と資源回復の試み
The investigation of habitat situation of an endangered clam Corbicula sandai in Lake Biwa and the attempt of recovering its population

*庄司知広(立命館大学大学院), 荒木希和子(立命館大学), 久保幹(立命館大学)
*Tomohiro SHOJI(Ritsumeikan Grad.), Kiwako S. ARAKI(Ritsumeikan Univ.), Motoki KUBO(Ritsumeikan Univ.)

【背景・目的】セタシジミは琵琶湖水系に固有の種であり、古くから水産資源として利用されてきた。しかし水質悪化や護岸改修等の環境変化により、その数は減少し漁獲量も著しく低下した。近年では、その資源回復の試みがなされているが、顕著な増加は認めてられていない。本研究では、セタシジミの個体数回復のため、琵琶湖水系の瀬田川においてセタシジミの個体数と底質及び水質とセタシジミの個体数を調査し、この種に適した生息環境の分布と現在の生息状況を明らかにすることを目的とした。
【方法】2018年4月から2019年12月の月に1回、琵琶湖南湖下流から瀬田川上流の8ヶ所からサンプリングを行い、シジミの個体数、底質の粒度組成及び底質の全炭素量(TC)、全リン量(TP)、総細菌数など全9項目を測定した。また、水の全窒素量(TN)など全9項目を測定した。
【結果】セタシジミの個体数は、2018年では1年を通して中流の沖側、上流、中流の岸側、下流の順で多く、2019年は中流全域、下流、上流の順で多かった。また、2018年7月には水温が急激に30℃に上昇し、シジミの個体数が大幅に減少したのに対し、2019年は8月にかけて徐々に30℃となり、その後個体数が大幅に増加した。底質の粒度組成は、瀬田川中流の沖側で砂地、その他の地点は泥質が多かった。しかし、2018年から2019年にかけてシジミの個体数が多かった中流の沖側で泥質の割合が高くなった。底質分析の結果、TCや総細菌数は地点や季節で明確な差が見られなかったが、TPは2年間を通して上流域で顕著に高い値をとった。水中のTNは、中流の岸側と下流地点で高い傾向が見られた。ゆえに、セタシジミの繁殖時期である初夏にかけて水温の急激な変化が、シジミの個体数に大きく影響することがわかった。以上のことから、セタシジミの生息には砂地の底質が適しており、個体数は繁殖期の水温に大きく左右されると考えられる。


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