| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-383  (Poster presentation)

二枚貝中に産卵されたタナゴ類卵仔魚の非殺傷的な確認
A non-invasive method for detecting eggs/juveniles of bitterlings deposited in unionid mussels

*梅村啓太郎, 栗田喜久, 鬼倉徳雄(九州大院農)
*Keitaro UMEMURA, Yoshihisa KURITA, Norio ONIKURA(Kyushu Univ.)

 タナゴ亜科魚類は淡水二枚貝に産卵する特殊な繁殖生態をもつグループである。二枚貝内で孵化したタナゴ類仔魚は数週間、二枚貝中で生育する。種ごとに産卵基質となる二枚貝が異なるという選好性を持つとされ、生態学的にも興味深い。また、人為的な環境改変による生息環境の悪化だけでなく、二枚貝類の減少によっても絶滅が危惧されており、種の保全上、産卵基質の確認は重要である。これまで、二枚貝内部のタナゴ類卵仔魚は、開口器を用いて二枚貝の内部を覗くという方法で確認が試みられてきた。ところが、この方法は、技術的な熟練を要し、産み付けられた位置によってはタナゴ仔魚の有無を確認できない場合もあり、貝を開く際に軟体部を傷つけてしまう可能性もあるなど、問題点も多かった。そこで、本研究では、環境DNA分析の技術を応用し、二枚貝中のタナゴ類卵仔魚を非殺傷的に確認する手法を開発した。
 まず、タナゴ類の卵仔魚が放出する環境DNA量を調べるため、ヤリタナゴの人工授精卵を浮上するまでの約3週間飼育した。3日に一度、飼育水500mLのうち100mLをシリンジフィルターで濾過し、その後飼育水を全換水した。先述の濾過サンプルからDNAを抽出し、種特異的プローブとプライマーによるqPCRを行った結果、卵仔魚からも環境DNAが放出されていることが確認できた。次に、ヤリタナゴが多数生息する遠賀川水系の農業用水路において採集したマツカサガイを持ち帰り、それぞれ飼育した。3日に一度、汲み置き水100mLを入れたコップに30分間静置したのち、その水を濾過した。同時に、ヤリタナゴの浮上を確認し、卵仔魚を保有するマツカサガイと保有しないマツカサガイを区別した。種特異的プライマーセットを用い、濾過サンプルを通常のPCRにより分析した結果、ヤリタナゴの卵仔魚を保有するマツカサガイを静置した水から、ヤリタナゴの環境DNAを検出することができた。


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