| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-386  (Poster presentation)

但馬地域の広葉樹林の下層植生とシカの影響
Relationships between understory vegetation and effects of deer in broad-leaved forests in Tajima region

*鴻村創, 内藤和明(兵庫県立大・地域資源)
*Hajime KOMURA, Kazuaki NAITO(RRM, Univ. Hyogo)

 近年、ニホンジカの生息密度の増加による自然植生の衰退が全国的に問題となっている。兵庫県ではこうした植生の衰退について県域スケールでのモニタリングが行われており、ニホンジカの生息個体数の推定とともに広域での研究が進められている。しかし、ニホンジカによる森林の利用頻度や生息密度は周囲の景観などによって局所的に異なってくることが予想され、より詳細なスケールでのニホンジカと植生の関係は十分明らかになっていない。そこで、本研究では兵庫県但馬地域におけるニホンジカによる利用頻度の違いと植生の衰退度合いの関係を明らかにすることを目的とした。
 豊岡盆地の中心を流れる円山川の東西それぞれにおいて5か所(計10か所、内4か所は防鹿柵設置)の落葉広葉樹林を選定し、自動撮影カメラを設置してシカの利用頻度を調査するとともに植生調査を実施した。防鹿柵が設置されている地点では柵の内外で植生調査を実施した。10m×10mのプロットを設置して階層ごとの樹種と被度・群度を記録し、さらに内部に2m×2mのサブプロットを帯状に5つ設定して出現種と木本実生の個体数を記録した。
 自動撮影カメラの画像から算出されたシカの撮影頻度(RAI)は、調査地によって大きく異なっていたが、円山川の西側よりも東側で高かった。また、植生調査によるプロット内の出現種数は、円山川の東側で少ない傾向が見られた。防鹿柵のある調査地では全てにおいて柵外よりも柵内で出現種数が多く、RAIが高い円山川東側ではその差が大きかった。木本実生の個体数も同様に円山川の東側で少なく、東側では防鹿柵外よりも柵内で個体数が多かった。RAIと植生調査の出現種数・最下層の植被率の間には負の相関が見られたことから、本調査地域では、シカによる植生の利用が下層植生の衰退の原因となっていることが示唆された。


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