| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-387  (Poster presentation)

富山県氷見市における野生鳥獣のビオトープ利用
Use of biotope by wildlife in Himi City, Toyama Prefecture

*倉澤央(富山大学 理学部), 川本朋慶(自然環境研究センター), 西尾正輝(氷見市教育委員会), 川上僚介(NPO法人Bioクラブ), 横畑泰志(富山大学 理学部)
*Akira KURASAWA(Fac.Sci,Univ.Toyama), Tomonori KAWAMOTO(JWRC), Masaki NISHIO(Himi City), Ryosuke KAWAKAMI(NPO Bio Club), Yasushi YOKOHATA(Fac.Sci,Univ.Toyama)

 富山県氷見市には絶滅危惧種イタセンパラ(Acheilognathus longipinnis)の保全と普及啓発を目的とした湿地型ビオトープ、「イタセンパラ保護池」(以下「保護池」)があるが、イノシシ(Sus scrofa)の掘り返しによる撹乱や訪問者への危険、サギ類によるイタセンパラの捕食の可能性が問題となっている。特にイノシシによる撹乱は湿地型ビオトープの維持管理に影響を及ぼす可能性が高い。本研究では、ビオトープ管理の観点から、自動撮影カメラを用いてイノシシに対する金属製防除柵の効果、訪問者による人的影響、サギ類によるイタセンパラの捕食可能性を検証し、湿地型ビオトープの維持管理について議論した。
 敷地面積が約4000㎡の保護池において、9基の自動撮影カメラを設置し、11種の哺乳類と8種の鳥類を確認した。防除柵の効果検証では、柵を設置した体験エリアにおいて設置前後でイノシシのRAI(相対撮影頻度)を比較した。その結果、設置前は10.7(個体/100日)、設置後は0.0となった。人的影響の検証では、立入禁止の保護エリアのデータを用い、訪問間隔を目的変数として生存時間解析を行った。その結果、保護池への恒常的なヒトの訪問を促すことでイノシシが保護池に「来にくくなる」ことが示唆された。このようなイノシシが「来にくくなる」対策は、防除柵のような「入れなくなる」対策と比べて維持管理の手間が掛からない点で有効であると考えられる。サギ類については自動撮影カメラによる利用頻度の分析とイタセンパラの標準体長から捕食の可能性を検討した。その結果、特にアオサギ(Ardea cinerea)による捕食の可能性が高いことが示唆された。一方でRAIは20.0と利用頻度は低いため、緊急の対策は必要ではないと考えられる。


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