| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-390  (Poster presentation)

河川の瀬切れの発生要因と瀬切れがアユに及ぼす影響 【B】
Causes of river droughts and the impacts of river droughts on Ayu fish 【B】

*沢田隼, 高倉大樹, 川原尚顕, 廣瀬和基, 中川晃成, 遊磨正秀, 丸山敦(龍谷大学)
*Hayato SAWADA, Hiroki TAKAKURA, Yoshiaki KAWAHARA, Kazuki HIROSE, Akinari NAKAGAWA, Masahide YUMA, Atsushi MARUYAMA(Ryukoku Univ.)

陸と海を結ぶ河川は、多くの水棲生物が生活環を維持するために不可欠な季節移動の経路として、生態系サービスを支えている。しかし、河川の表流水量の不足により河道が干上がる瀬切れが、水系の連続性を前提に進化してきた回遊魚類の生活環維持を困難にしている。本研究では、瀬切れが頻繁に確認されている琵琶湖水系の12河川を対象に、瀬切れの現状把握と発生要因の探索および瀬切れが回遊魚類であるアユに及ぼす影響の把握を試みた。
 2016〜2018年のそれぞれ5〜9月に週1回の頻度で、ドローンおよび踏査によって瀬切れ位置の把握を行なった。瀬切れの発生要因を探索するため、GISソフトを用いて河川の特徴を数値地図上で算出した。加えて、滋賀県土木防災情報システムから降水量の情報を、滋賀県流域政策局から河川からの取水量の情報を収集した。さらに、2018年の9〜11月に2週間に1回の頻度で、アユの産卵が確認されている下流域を踏査し、産卵量を推定した。統計解析では、赤池情報基準(AIC)による段階的なモデル選択を用いた一般化線形モデル(GLM)により瀬切れの頻度を説明する変数を、一般線形モデル(LM)によりアユの産卵量を説明する変数を求めた。
 瀬切れは12河川中8河川で確認され、河川ごとに瀬切れの頻度が異なった。AICが最小のGLMの結果から、急峻または横長形状の流域を持つ河川で瀬切れの頻度が高くなることが示された。今回選ばれた瀬切れの頻度を説明する変数は河川や流域の形状を示すものであり、中長期的な河川管理との関連のみが示唆された。
 アユの産着卵は、調査した12河川すべてで見つかった。AICが最小のLMの結果から、瀬切れの頻度とともにアユの産卵量が減少することが示され、瀬切れがアユの生活環維持を困難にしていることが示唆された。今後、瀬切れの頻度が高くなればアユの個体群サイズが小さくなることが予想され、さらには漁獲量やレジャー、食物網構造に影響が波及するかもしれない。


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