| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-400  (Poster presentation)

eDNAの放出は成長段階によって変わるのか?〜オオサンショウウオを例に〜
Does the release of environmental DNA vary with growth stage ? : a case study using Japanese giant salamander (Andrias japonicus)

*Teppei MORIMOTO(Kobe Univ.), Yuki TAGUCHI(Asa Zoo, Hiroshima), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

環境DNA分析手法が生物多様性の把握などに利用される一方で、環境DNAの基礎情報についての知見は不足している。なかでも、異なる年齢間や鰓の有無による環境DNA濃度の違いは明らかになっていない。本研究では、(1)両生類であるオオサンショウウオ(Andrias japonicus)において年齢を経るにしたがってミトコンドリア環境DNA濃度が変化するのか、(2)環境DNA放出量に鰓の有無が影響しているのかを検証することを目的とし、オオサンショウウオの齢の違いや鰓の有無によって核およびミトコンドリア環境DNA濃度(copies/L)が変化するのかを確かめる実験を行った。実験には0歳鰓あり、1歳鰓あり、3歳鰓あり、3歳鰓なし、6歳鰓なし、14歳鰓なし、20歳鰓なし、28歳鰓なしの9齢の各4〜9個体を用いた。結果として、6歳から28歳は、0歳から3歳に比べて核とミトコンドリア環境DNA濃度が有意に高かったが、6歳から28歳間では齢による有意な差は見られなかった。脊椎動物の環境DNA分析において、本研究のように0歳から28歳という広い齢の個体を用いた実験はこれまで行われておらず、成体の間で齢に違いがあっても環境DNA濃度が変わらないことを示したのは初めてである。また、鰓のあるグループの方が鰓のないグループに比べて単位体重当たりの核環境DNA濃度が有意に高かった。この結果から、鰓呼吸によって核環境DNAの放出が促進されることが示唆された。さらに、加齢とともに単位体重あたりのミトコンドリア環境DNAと核環境DNAの比率が減少した。このことから、単位体重あたりのミトコンドリア/核環境DNA比を用いると、環境DNAデータから個体群間の平均年齢などを推定できる可能性がある。


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