| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-PC-405 (Poster presentation)
筆者らのこれまでの研究により、古くから草原として継続している草原の面積が広いかどうかによって蝶類群集が異なることがわかってきた。実際に蝶類が広い古草原を必要としているかを確かめるには、発生源を特定する必要がある。そのための最も直接的な方法が卵・幼虫・蛹の観察である。しかし、成虫に比べ移動が少なく保護色を持つ種が多いため、発見は困難である。そこで、蛹・幼虫の容易な発見を可能にする手法の開発を試みた。
一部の蝶類の蛹には紫外線照射に対して蛍光を発するものが存在することが知られており、これが蛹の容易な発見につながるのではないかと考え、(1)どのような種の蛹が蛍光を発するのか、(2)紫外線蛍光の有無について画像解析を用いて判別できるか、(3)昼間の探索に比べ、紫外線蛍光を用いた夜間の観察は効率が良いかについて調査した。
紫外線の有無の判別には4科20種の蝶類蛹を用いた。紫外線照射下の暗室で撮影し、得られた画像の画素をRGB成分に分解したところ、使用した紫外線ランプには緑成分が含まれておらず、緑成分を取り出すことによって蛍光の有無を簡易的に判別することが出来た。これにより5種で明らかな蛍光が、2種で蛍光を持っている可能性が示された。蛍光を発した種には4科全てが含まれており、紫外線蛍光が蝶類において一般的な現象であること、また、属内でも蛍光の有無が異なることが明らかになった。
昼と夜間の蛹発見効率の比較では、半自然草原のヒョウモンチョウで、昼間の蛹発見数は昼間より夜間で高い傾向があった。これにより、ヒョウモンチョウの蛹の発見には、夜間の紫外線を用いた探索が有効であることが示された。環境省レッドリストにおける絶滅危惧Ⅱ類のヒョウモンチョウの保全において、紫外線蛍光を用いた探索は定着しているかの確認に有用な手法である。