| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-406  (Poster presentation)

霧ヶ峰高原における鳥類群集と周辺環境との関係
Relationship between  bird communities and surrounding environments in Kirigamine Highland

*小木曽快(信州大学院), 大窪久美子(信州大学)
*Kai KOGISO(graduate school of Shinshu), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

 霧ヶ峰高原では山地草原性鳥類について基礎的な研究が中村(1963)を中心に行われ、その後の先行研究では、コジュリンの消滅(中村 1981)や八島ヶ原湿原周辺における草原性鳥類の減少(堀田ら 2006)が報告されている。霧ヶ峰高原における樹林化や湿原の乾燥化がこれらの減少要因として予想されているが、不明な点も多い。そこで本研究では、霧ヶ峰高原において立地環境条件の異なる五つの調査地を選定した。各調査地において鳥類群集の組成と構造を明らかにし、これらと主に植生環境との関係を検討することで、半自然草原生態系としての本群集の生物多様性、特に草原性鳥類の保全策を検討することを目的とした。なお本研究はJSPS科研費JP19K06107の助成を受けたものである。
 鳥類群集調査はラインセンサス法を用い、各調査地に全長2kmのセンサスルートを設定した。調査は2019年に全75回実施され、計36種2、258個体が確認された。各調査地において、主にノビタキとホオアカが優占し、先行研究と同様の結果になった。ノビタキの個体数は、調査地Cにおいて他の調査地より有意に高かった。また、各調査地における草原性鳥類(ノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、オオジシギ、ヒバリ、ノゴマ)の個体数割合は50%以上と著しく高く、特に調査地CとDにおいて、各々77.1%と75.5%で著しく高かった。鳥類の出現回数を用いたTWINSPAN解析による調査地分類では、第1分割で樹林化が特に進行している調査地A、BおよびEとルート周辺の草原環境が多い調査地CとDに大きく二分された。また、種群分類では全出現種は8グループに分類された。今回、鳥類群集調査では地域間による出現種の違いがみられ、これは周辺環境を反映したと考えられた。また、先行研究同様、本研究からも湿原および草原の樹林化が草原性鳥類の減少に影響を及ぼしていると考えられた。


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